研究課題/領域番号 |
24530403
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
野村 親義 大阪市立大学, 文学研究科, 准教授 (80360212)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | インド / イギリス / ボンベイ / 証券取引所 / 経済制度 / 長期資金 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 |
研究概要 |
平成24年度の主たる作業は史料の調査・収集である。本研究では、6月29日から7月9日(イギリス)と、3月4日から3月19日(インド)の二度にわたり、海外で史料の調査・収集作業を行った。 イギリスでは、主にロンドンの大英図書館において、植民地期インドの各種証券取引所調査委員会報告書関連一次史料を調査・収集するとともに、証券取引所の運営に多大な影響を与えた、植民地期の金融政策に関する一次史料も調査・収集した。 インドでは、主としてデリーのインド国立公文書館、ボンベイのマハラシュトラ州政府公文書館において、各種証券取引所調査報告書関連史料の調査・収集を行った。とくに、マハラシュトラ州政府公文書館においては、1920年代初頭に実施されたボンベイ証券取引所調査委員会が実施したものの、その成果を公表しなかった口証oral evidenceの一部を調査・収集した。ただ、この口証は、数千枚に及ぶ史料からなり、今回の滞在でそのすべてを調査・収集できなかった。平成25年度以降、再度マハラシュトラ州政府公文書館を訪問し、今回の調査を継続する予定である。デリーのインド国立公文書館では、植民地期インドの金融・財政政策関連史料のうち、ロンドンの大英図書館が保管していない一次史料を発見、調査・収集することができた。 これら史料の調査・収集作業に加え、平成24年度は、イギリス・インド渡航前に保有していた史料を基に、植民地期インドの証券取引所の運営の有様、およびその運営と密接に関係する同時期の企業金融に関する英文1万6千字程度の報告書を執筆し、9月一橋大学で開催された国際会議Asian Historical Economics Conferenceで報告した。また、証券取引所における金融取引に大きな影響を与える、株式会社の経営戦略の一端を論じた既発表論文の発展版を国内、および国際研究会において、2度報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、史料の調査・収集、学会・研究会報告、論文執筆と、研究が順調に進展した一年であった。 研究実施計画に記した、平成24年度の主たる作業は史料の調査・収集である。研究実績の概要で記したように、平成24年度は、イギリス・インドにおいて、計画通りこれら作業に従事する時間を確保することができた。特にインドにおいては、当初の計画通り、マハラシュトラ州政府公文書館において、ボンベイ証券取引所に関する調査報告書の未刊行一次史料を調査・収集することができた。もっとも、これらの史料は数が膨大であるため、平成25年度以降も、継続した調査・収集が望まれる。 加えて平成24年度は、植民地期インドの企業金融に関する報告書を執筆し、国際学会で報告することができた。更に、同時期の株式会社の経営戦略の一端に関する既発表論文を、国際研究会を含め2度報告する機会があった。これらの学会・研究会では、証券取引所機能に関する研究の進展に重要な議論を参加者の方々と持つことができ、次年度以降の本研究の遂行に大変有意義な経験となった。 さらに、平成24年度は、株式会社の経営戦略・企業金融の有様を通じて、証券取引所の動向に強い影響を与えうる、1920年代の株式会社の労使関係に関する英文4万字程度のワーキングペーパーを執筆した。当時の労使関係の複雑さが、いかに株式会社の事業拡大の制約要因となっていたかを明らかにしたこの論文の成果は、労働と金融という株式会社の2大生産要素の取引が、相互に密接に関係していることを、豊富な一次資料を用い明らかにした点で、本研究に貢献する貴重な研究である。 以上のように、計画した史料の調査・収集のみならず、学会・研究会発表、論文執筆と、多面的に研究を行った平成24年度は、本研究課題が順調に進展したということができる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、引き続きインド・ボンベイのマハラシュトラ州政府公文書館において、史料の調査・収集作業を続ける。合わせて、デリーのインド国立公文書館やロンドンの大英図書館において、関連史料の調査・取集を行う。 これら作業に加えて、平成25年度は、植民地期インドの証券取引所の機能に関する論文を執筆し、ワーキングペーパーとして出版する。その際、証券取引所の機能の有様を研究するに有用な、近年経済史家が積極的に取り入れているゲーム論や経済制度論の最先端の研究成果を学習し、ワーキングペーパーに反映させたい。 また、これら作業に加え、1920年代のインドの証券取引所の有様に大きな影響を与えた、当時のインドや関連諸国の政治経済情勢に関しても研究を進め、平成24年度、イギリスやインドで収集した史料をもとにオリジナルな研究成果が出せそうな研究テーマに関しては、積極的に学会・研究会で報告するか、もしくはワーキングペーパーほかの形で、出版する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費のなかで、最も大きな割合を占めるのは旅費である。平成24年度に引き続き、イギリス・インドにおいて史料の調査・収集を予定しており、昨年度同様かそれ以上の費用が旅費に使われることになると考えられる。 次に平成25年度の研究費として重要なものは、英文校正費である、平成25年度は、合計6万字程度の英文を執筆した平成24年度と同様の英文論文を執筆する可能性がある。現在の円安がこのまま続くと、執筆した英文論文の校正には、平成24年度以上の費用が掛かるものと思われる。 最後に、平成25年度は、デジタルカメラなど、平成24年度に購入しなかった備品の購入に一定額の費用が掛かるものと思われる。
|