最終年度である平成27年度の主たる作業は次の2種の作業からなる。1.これまで収集した資料を基に、20世紀前半のインドにおける証券取引所の機能の有様や、機能のありように影響を与えた経済政策や要素賦存のありようを解明する論考を執筆する。2.追加的な資料をインドもしくはイギリスにおいて調査・収集する。以下、各々の仔細を報告する。 1.平成27年の主たる作業は、この1の作業となる。平成27年度の作業1で最も重要なものは、申請時の「研究計画・研究方法」で述べた具体的な研究目的「3.1920年代初頭以前の証券取引所の機能の実態解明」に関するものである。具体的には、19世紀後半から20世紀前半のインドにおける資金供給のありようを、同時期のインドの賃金・(短期資金)レンタル比率を同じく同時期の日本の賃金・(短期資金)レンタル比率と比較することで明らかにした。考察を通じ、インドの同時期の賃金・(短期資金)レンタル比率が、同時期の日本のそれと類似のトレンドを経験していることを解明した。この解明は、一方で、同時期のインドにおいて、19世紀後半から工業化を本格化する日本と比し、要素賦存において大きな相違は経験していないことを示し、他方で、短期資金を長期資金に変換する、本事業が注目する証券取引所のような経済制度の機能の有様こそが、19世紀後半以降の日本とインドの経済発展の相違を説明する重要な要因であることを示唆する。インド経済史において盛んに提示される、要素賦存の相違に基づき19世紀後半以降の日印の経済発展経路の相違を説明せんとする既存の研究成果に反証を提示する本研究成果は、27年度末に英文校閲に回し、現在出版に向けて準備をしている。なお、平成27年末には、このほか、これまで書き溜めてきた原稿も英文校閲に回り、公表への準備を整えることができた。 2. 2月にイギリスで追加的な資料の調査・収集を行った。
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