研究課題/領域番号 |
24530404
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研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
飯塚 靖 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00514126)
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キーワード | 兵器生産 / 国共内戦 / 東北解放区 |
研究概要 |
本年度は、国共内戦時期瀋陽を追われた中国共産党が、その後東北奥地でどのようにして兵器生産を進めたかについて、論文をまとめることができた。本テーマの基礎資料としては、『中国近代兵器工業档案史料』四(兵器工業出版社、1993年)、『東北解放区軍工史料』(1994年、内部発行)を利用し、その記述内容を丹念に読み解くことによって東北奥地での中共の兵器生産の実態をほぼ解明することができた。また、そこで利用された工場施設や機械設備が、満洲国時期の日本側の産業設備や軍事施設であることも解明できた。特に、太平洋戦争末期に米軍の空襲を逃れるために満洲奥地に疎開させた日本側の設備が、中共の兵器生産に大きく貢献した事実を解明できた。これは旧来全く明らかにされてこなかった事実であり、本研究の大きな成果と言える。さらには、それら兵器生産に留用された日本人技術者・技術工に関する回想録や文献史料も収集でき、彼らの実態に迫ることもできた。そしてこうした内容の論文を「国共内戦期・中国共産党による東北根拠地での兵器生産(I)」として、『下関市立大学論集』第57巻第3号に掲載した。ただ、本論文は本テーマの前半部分であり、引き続き後半部分もまとめて行きたい。 また、本年度は台湾の国史館と中央研究院近代史研究所で資料調査を実施し、文書史料と公刊資料の台湾での所蔵状況を確認することができた。そして、台湾で集めた公刊資料は、論文の中で利用することもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に発表した論文は、中共の東北奥地での兵器生産の全容を解明した内容であり、当初設定した研究目標を十分に達成したものと言える。特に、兵器生産に利用された日本側の設備内容や留用された技術者・技術工の実態を解明できたことは大きな成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、国共内戦終結後、東北の軍事産業がいかに再編されるのか、その変遷を追いたい。内戦が終結すると、まずは奥地の工場の大連・瀋陽・哈爾浜など大都市への移転が進められるであろう。また、軍事産業の民需産業への転換も進められるはずである。そうした、移転・転換がいかに進められたのか、その実相に迫りたい。次に、朝鮮戦争が勃発すると再度軍事産業の増強が図られるはずである。朝鮮戦争時期に軍事産業はいかに強化されるのか、またソ連からいかなる支援を受けるのか、特にこの点に重点を置いて研究を進めたい。
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