研究課題/領域番号 |
24530406
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
柴田 善雅 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (00276669)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 満洲企業 |
研究概要 |
満洲に本店を置く政府系企業集団の分析のため、該当する企業集団に属する会社の営業報告書の集積を続けた。所属大学図書館収蔵のマイクロフィルム版画像データの入力作業を行った。入手済み営業報告書の貸借対照表の入力作業を開始した。ただし国内入手可能営業報告書には欠落する部分が多いため、『満洲銀行会社年鑑』所載の貸借対照表と『満洲国政府広報』の決算広告を使って補充する作業も開始した。この作業においては入力すべき営業報告書の点数が多いため、資料発掘作業と平行して続けることになる。個別企業もしくは企業集団については、関連社史の収集により補強するため、古書店より関連する社史、回顧録等を10冊以上購入した。それにより当該法人の欠落年期の貸借対照表の補充と、関連する周辺情報や企業内情報の補強することが可能となる。その分析の作業にも着手した。とりわけ1930年代の営業報告書は、南満洲鉄道系、東洋拓殖系、満洲国政府系、満洲重工業開発系等のいずれも豊富であり、この時期の数値の接続作業と分析を先行させた。 日本国内で入手不可能な満洲企業の営業報告書の欠落部分を補充するため、3月に中国・吉林省社会科学院満鉄資料館を訪問調査し、主として営業報告書の複写作業を行った。一度だけの訪問調査では点検もしくは複写しきれない分量が収蔵されているため、次年度以降も訪問調査を続け、でさらに収集作業を続けたい。 そのほか満洲企業の個別情報の収集のみならず、満洲企業の全貌を把握し、それを満州における企業集団分析と連動させる必要がある。この基礎的作業として時期を限定したデータベース構築作業にも着手した。研究が相対的に遅れている第1次大戦期と、『満洲銀行会社年鑑』の刊行による情報開示が終了した1942年以降の時期を中心に企業データを入力している。入力すべきデータ分量が多いため、かなりの時間を要する作業となる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度末の研究の到達状況では、社史・事業史・会社関係者回顧録・企業一覧等の収集作業を行って、満洲重工業開発系の有力な資料を発掘できたが、幅広く集積するという目標に対しては、入手作業が当初の見込みよりかなり下回った。またそれに伴い入手済みの社史・事業史・会社関係者回顧録等の分析も遅れている。 他方、営業報告書の複写作業はマイクロフィルムからの直接複写ではなく、画像データに移した上での一括複写で処理しているため、時間を節約して複写を積み上げることができた。そのため当初見込みよりなかり進捗している。それに伴い複写した営業報告書を使った貸借対照表の入力作業と分析作業は速めに着手することができた。また営業報告書が欠落している企業については、『満洲銀行会社年鑑』掲載の貸借対照表の入力作業に着手した。そのほか『満洲政府広報』所載の決算広告も利用し、貸借対照表の接続作業を続けている。ただし1920年代の営業報告書は未発掘のものが多く、1925年より前の時期については貸借対照表の補充が困難な事例も多い。その欠落を埋める手立てを別途必要としている。満洲の新聞の決算広告の点検がさらには必要となるが、マイクロフィルム版の新聞の点検作業の負担が重く、着手するかについて検討中である。 そのほか満洲企業全体のデータベースを構築することで、満洲企業集団の位置づけを行う必要があり、その作業にも着手した。ただし分析に使える水準まで入力件数を増やす必要があり、平成24年度末までの進捗状況は十分とはいえない。 国外資料収集作業として、中国・吉林省社会科学院満鉄資料館の訪問調査を行い、日本で入力不可能な営業報告書の複写作業を行い、十分な成果を得た。訪問調査が3月後半であったため、持ち帰った複写資料の入力作業は年度内に着手できなかった。25年度早期に入力作業を終える予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は営業報告書の収集とその貸借対照表の入力作業に傾注しすぎて、社史・事業史・企業関係者回顧録・会社一覧等の調達に十分な時間を割けなかったため、平成25年度は古書収集にさらに時間を投入する。また古書店で入手できない満洲企業の社史・事業史・回顧録等については、国内資料収蔵機関等から所属大学図書館経由で一時借覧して複写することで補充するつもりである。社史類等を入手できる企業については、営業報告書とにらみ合わせつつ、豊富な企業情報に依拠して個別分析を加える。それを企業集団分析に纏め上げてゆく各論的作業として位置づけている。営業報告書の貸借対照表の接続作業も営業報告書の複写作業と平行して続けており、平成25年度末には国内営業報告書の複写作業を終了する見込みであり、その掲載する貸借対照表数値の入力作業に重点を移すことになる。それを基礎表として満洲における政府系企業集団の連結資産負債の推計作業の基礎表作成に着手する。もちろん平成25年度末までに、満洲企業集団の分析対象とする企業グループのすべての営業報告書の集積は不可能であり、次年度以降も欠落部分を埋める作業を続けることになる。『満洲国政府広報』のみならず、さらに新聞決算広告にまで視野を広げる必要がある。 そのほか個別企業の内部資料の発掘作業として、外務省外交史料館と財務省財務総合政策研究書財政史室の収蔵資料のみならず、独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所と公益財団法人三井文庫の収蔵資料の調査を行い、満洲企業政策史と企業集団史の補強を行う。 日本で入手できない営業報告書については、平成25年度も中国・吉林省社会科学院満鉄資料館の訪問調査も継続し、欠落年期の補充作業を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費の使用は、社史・事業史・企業関係者回顧録・企業総覧類の調達に十分な時間をそそぐことができなかったため、当初計画より収集が遅れてしまった。平成25年度は年度前半から幅広く関連文献の収集に注力する。国内資料状況では南満洲鉄道関係が一番充実しているが、満洲重工業開発関係の資料が相対的に乏しく、そのため同社関連の政策資料と営業関連資料の発掘に注力したい。古書店で入手できず、国内の他大学等の資料収蔵機関に収蔵されている社史等については、図書館を通じて借覧するか複写依頼をして収集する。複写依頼では研究費の執行となるが、図書館経由の図書の借覧の場合には、所属大学の複写機を利用するため、複写費は外部化されることになり、研究費を充当することはない。館外貸出禁止の図書のみ複写依頼を行うことになる。 そのほか国内資料収蔵機関の一次資料の発掘作業も平行して行う。公益財団法人三井文庫の収蔵資料の訪問調査により、三井系企業の満洲における進出関係資料の発掘を行い、その複写作業を行う。また独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所で収蔵する『張公権文書』の複写発注作業も併せて行い、国内の資料調査の範囲を広げる。この両資料収蔵機関の複写単価は1枚50円から100円のため、かなりの複写費用を見込んでいる。 国外資料調査発掘作業として、平成25年度も中国・吉林省社会科学院満鉄資料館の訪問調査を行う。出国時期により航空券とホテル料金が異なるが、平成24年度と同じ3月に訪問調査を行うことになりそうなため、出張旅費は円安の影響で、平成24年度をいくらか上回る金額となる見込みである。長春における作業日数にもよるが、効率的に作業して、平成24年度以上の複写を実現したい。
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