本研究は満洲における複数の持株会社が率いた企業集団の実態を総体的に分析する。満洲における持株会社として南満洲鉄道が知られており研究も豊富である。同社は100社を超える関係会社投資をし満洲産業化を強力に推し進めた。満洲には他に東洋拓殖株式会社、満洲国期には満洲国の直接出資会社が多数設置され、1937年には満洲重工業開発株式会社が多数の会社に出資した。そのほか南満洲電気株式会社・満洲電業株式会社等も事業持株会社となった。これらの事業規模比較を企業財務から試みることを課題とする。関係会社の営業報告書と関連社史の収集、政策資料の発掘等で基礎資料を固め、基礎資料としそれに基き企業集団比較を試みた。比較手法として関係会社を出資比率で50%を下回らない連結子会社、20%を下回らない持分法適用会社、それ以外のその他会社に分類し、出資比率の変動に留意しつつ、連結子会社・持分法適用会社の未払込資本金控除総資産(以下、総資産)を集計した。さらに満洲国政府出資会社を除き、持株会社との連結子会社の連結総資産を試算し、持株会社総資産との総資産連単倍率を試算し、持株会社本体との比較を試みた。さらに複数の満洲の政府系企業集団の連結総資産を事業規模を比較することが可能となった。従来の研究では持株会社の資本金、関係会社の社数と払込資本金を比較する手法が一般的であったが、その比較手法を大きく乗り越えた連結子会社総資産・持分法会社総資産及び連結総資産による比較を可能とした。さらに出資のみならず連結子会社の貸借対照表から借入金情報を補強して連結総資産統計を精査した上で、2016年度に研究単著を出版し成果を公表する。
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