研究課題/領域番号 |
24530407
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
榎 一江 法政大学, 大原社会問題研究所, 准教授 (90466813)
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研究分担者 |
五十嵐 仁 法政大学, 大原社会問題研究所, 研究員 (20193170)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 労働史 / 経済史 / 生活史 |
研究実績の概要 |
本研究は、非常時における労働と生活のあり方を歴史的に考察するため、戦時期に焦点を当てる。とりわけ労働組織のあり様に注目するため、主たる分析対象を産業報国会の活動とする。産業報国会とは、1938年から展開された産業報国運動のもと、全国の企業・事業所単位で、会社役員・職員・労働者の全員加盟組織として作られた団体である。これにより、労働組合は解散して産業報国会に再編されていき、1941年にはほぼ全国の工場・事業場を網羅するものとなった。そして、1945年8月の敗戦を経て、労働組合に再編成されていくのである。 平成26年度は、地域史研究および経営史研究における労働資料の収集を行い、各地で編纂された地域史等の検討を行う予定であったが、研究代表者がアメリカ合衆国ハワイ州での在外研究に従事することになったため、国内資料の収集・整理・公開に関する作業を一時中断し、ハワイの日系社会を事例とした国際比較研究を進めることにした。そもそも、本研究が産業報国会の活動に注目したのは、戦争という非常事態に際し、この組織の活動を通して労働者の日常がどのように再編されたかを実証的に考察できると考えたためであった。戦時期の労働と生活というテーマに対し、本研究ではドイツ・ナチズムの労働組織との比較検討を進めているが、さらなる国際比較を行うことで、より重層的な分析が可能となる。ハワイの日系社会における戦時期の労働と生活の変容について検討することは、本研究の進展にとって重要な作業の一つとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は、研究代表者の在外研究に伴い、国際比較の可能性について検討を行うことにした。そのため、当初予定された国内資料の収集・整理・公開については、一時中断することになった。研究全体としては、やや遅れを生じることになったが、最終的な研究成果の公表に向けて、新たな可能性を開くという意味で重要な成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、本研究の最終年度であるため、大原社会問題研究所所蔵桜林資料の公開準備を行い、一般利用が可能な状態にする。 また、必要に応じて追加資料を収集しながら、検討結果のまとめを行う。そのため、分担者、連携者とともにこれまで進めてきた検討結果を共有するための研究会を定期的に開催する。各分析は、より専門に近い研究者との議論を通じて精緻化される必要があるため、国内外の専門家との議論の場を設定する。そして、産業報国会の活動を実証的に再検討し、戦時期の労働と生活に関する包括的な分析結果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、地域史や経営史における労働資料の収集を行う予定であったが、研究代表者の在外研究に伴い、国内資料の収集・整理作業を一時中断した。そのため、予定していた国内出張旅費と資料整理に要する謝金の支出がなく、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、一時中断していた国内資料の収集を進めるとともに、その整理作業を行うため、旅費および謝金を要する。また、国際比較研究の進展を受け、最終年度に予定されていた国内外研究者との情報交換をより積極的に実施するため、海外出張を含む旅費を要する。そのため、次年度使用額分は主に旅費、謝金として使用する計画である。
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