本研究は、法政大学大原社会問題研究所所蔵桜林資料(産業報国会関係資料)をもとに、戦時労働組織の研究を通して、戦争という非常事態に際して労働者の生活がどのように再編されたかを追及することを目的とする。本研究の期間中、戦時期に産業報国会の下部組織となった労働科学研究所が所蔵する戦前・戦時期の資料群を法政大学大原社会問題研究所が引き受けることになったため、この資料群の整理分析を含めた研究計画の変更を行い、研究期間を延長した。 最終年度となる平成28年度は、追加収集した労働科学研究所旧蔵資料のうち、戦前期を中心とする抜き刷り資料群の配架作業を行い、利用可能な状態にするとともに、労働科学研究所の所長を務めた暉峻義等に関する資料の整理を進めた。また、労働科学研究所旧蔵資料の移管に関して、『大原社会問題研究所雑誌』652号に特集を企画した。この企画には、同じく労働科学研究所旧蔵資料を移管した広島大学、専修大学、立教大学、大分大学の研究者に寄稿していただき、資料移管の経緯を記録として残すとともに、今後の研究の可能性について示唆することができた。 研究成果の報告としては、企業パターナリズムに関する国際交流研究会において、戦時期の厚生施設に関する報告を行った。この成果は、『大原社会問題研究所雑誌』2017年7月号に掲載予定である。また、本研究の成果をもとに、経済史のみならず政治史や女性史の研究者を加えて共同研究をすすめており、共同研究の成果は、2017年度に法政大学出版局より『戦時期の労働と生活』として刊行する予定で準備を進めている。
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