研究概要 |
平成24年度については,世界銀行がドイツによる多様な流動性供給によって,西ヨーロッパ諸国や日本,インドなどの諸国のインフラ・エネルギー事業への融資を実施したことを明らかにした。詳細については,以下の通りである。 1950年代後半,ドイツは経常収支黒字により金・ドル準備を蓄積し,資本輸出を要請された。ドイツは固有の旧植民地との関係が断ち切られていたため,世界銀行を通じて多国間の途上国援助を実施することが,国際貢献をアピールする上でも好都合であった。また,ドイツの輸出産業は世界銀行の大規模プロジェクトに関与することによって,途上国への資本財・投資財輸出において,世界市場での競争力が高まることを期待した。 以上の判断から,世界銀行への資金的貢献は多様な形態で実施された。世界銀行へのローン[期間:1~3年,利率:2.5~4.5%]は56年以降にドイツ連邦銀行を経由し,ドルおよびマルクで実施され,61年には総額6億2,500万ドルに達した。また,ドイツの世界銀行出資金は3億3,000万ドルであり,このうち18%分は5,940万ドル(= 2億4,948万マルク)であった。この出資金マルク18%分が50年代後半に解除され,セイロン(Laxapana, 948 万マルク),パキスタン(Karachi, 301万マルク),インド(Trombay, 1,000万マルク)の発電事業などに利用された。 59年4月には,初めてのマルク建て債券[2億マルク,5%,15年満期]が発行された。この債券は,ドイツ銀行を主幹に,73金融機関が参画してシンジケート団を組成した。ドイツによる世界銀行へのローンは,この債券として国内の8つの資本市場でフロートされた。この結果,ドイツは,50年代後半には世界銀行に対してアメリカに次ぐ第2の資金供給国となったのである。
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