本研究はロシアにおいて形成された企業システムを研究対象とし、設計主義的な企業システム像とは異なる市場移行の初期条件や旧社会体制から引き継いだ企業システムとの連続性(経路依存性)を重視することによって、独自の企業行動・構造、企業統治システムの実態把握を試みたものである。 3年間にわたる研究実施過程で、ロシア企業におけるコーポレート・ガバナンスを以下の項目から分析した。1.株式所有構造の変化、2.意思決定における株主・経営者・従業員の相関関係、3.経営者選抜制度と報酬、4.企業ルールと組織の存在、5.企業の意思決定と行動にかかわるインフォーマル・ルールと組織の存在、6.企業経営と金融機関の相関関係から実証的に研究した。市場経済移行期において、どのような制度(メインバンク制、金融支配、株式の相互持合いなど)が形成され、それが企業の行動をどのように規定しているのか、また企業は形成された経済システムに依存する法制度や経済政策にどのように適合しているのかを分析した。平成24年、25年はモスクワでの現地ヒアリング調査を実施し、理論的仮説を実証的に跡付ける作業を実施した。 今後の研究展開の萌芽となるロシア企業の社会的責任、企業と社会に関する研究にも着手することができ、本研究の当初目的と計画を十分に達成することができたと総括している。
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