研究課題/領域番号 |
24530415
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久原 正治 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00319485)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 危機と組織の失敗 |
研究概要 |
福島第一原発事故に関する4つの公式報告書、その他さまざまな当事者の記録、東京電力内のテレビ会議の録画記録などのデータが出そろったので、これらのデータを取りそろえ、危機と不確実性かにおける意思決定の観点から、それらの報告書を比較検討し、内容を整理した。 その整理した結果を、「企業はなぜ大きな不確実性の下で致命的な失敗を犯すのか―福島第一原発事故のケースで考える-」と題して2012.9.8日本大学商学部で開催された日本経営学会第87回全国大会で報告し、数多くの貴重な意見を得た。また、8月のBostonにて開催されたAcademy of Management年次総会に出席し、世界の経営学者と意見交換し、さまざまな新たな理論枠組みについての研究発表を聞くことができた。 1月には、日本長期信用銀行を事例とする金融機関の危機対応について、Working paper として‘Employment Issues in Japanese Bank: A Case Study of Shinsei Bank” をとりまとめ、2013.1.6サンディエゴで開催の2013ASSA Annual Meetingで発表した。 3月には福島原発問題を組織ディスコース理論で分析する明治大学研究グループに招待され、「福島原子力発電所の組織問題を考える」と題して2013.3.9沖縄大学開催の研究部会で研究発表を行い、今後の研究展開にかかわる数々の貴重なコメントを得た。 このようにして、世界的に興味を持たれる福島原発事故の問題に関して、本件は研究者の単独研究として計画されたが、その後の他の研究者との交流により、その問題意識や分析の幅に展開の可能性が広がったことは、初年度の特記すべき成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
福島原発の事例研究は計画通り進み、当初予定しなかった、同じ問題を別の手法で研究するグループとの協力の可能性が出るなどの想定以上の成果が見られた. もう一つの柱である金融危機と邦銀の対応に関する日本長期信用銀行の事例研究は、原発事故のほうに研究時間を取られ、当初の計画に比べ進捗がやや遅れている。 全体としては、喫緊の研究課題である福島原発事故にかかわる組織分析を先に進めることが重要な環境にあるので、研究は順調に進んでいるということができる。
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今後の研究の推進方策 |
福島原発事故の事例研究については、他の研究グループとも協調しながら、大きな危機に瀕する企業の経営意思決定失敗の理論化を進めたい。日本長期信用銀行の事例研究については、本年4月より研究の場が東京に移った利点を生かし、他の研究者の協力を得ながら、危機における経営意思決定の失敗の解明を進めたい。 それを通じて、国際学会でも発表できるような論文の準備に入りたい。国内学会では昨年と同様研究成果の発表を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き福島原発関連の資料やデータの収集を行う(消耗品:約15万円)。本務校が変更となり、従来使用していたデスクトップ型のパソコンが使用できなくなったので、これを新任校に設備として導入し、調査データの整理に活用する(備品:約10万円)。 本務校の変更に伴い、秋口までの海外出張は難しいが、それ以降に時間を見出して、できれば大きな学会に出張し、海外の研究者との意見交換を行う。もしこれが日程的にできない場合は、国内の諸学会に積極的に出席する(出張旅費:約35万円)。
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