自然災害が頻発する我が国では,住民や外国人を含む旅行者などの地域滞在者に対して,自治体が防災情報を提供し,現在地の自然災害に対する危険性の有無を認識させ,適切な避難判断および避難行動がとられるようにしておくことが重要である.また,災害時の避難や安否確認には,地縁で組織される自主防災組織の果たす役割が期待されるが,進展・普及が著しい情報通信技術による支援システムが提供されていないため,自主防災組織の機能レベルは低い水準にとどまっているのが現状である. 本研究では,自治体からの防災関連情報の効果的な提供と自主防災組織の機能化のための方策を実証的に研究すべく,最初の2年間の研究で,1)全国の自治体のウェブサイトの悉皆調査による防災および自主防災組織関連情報の発信状況の把握,2)ソーシャルメディアの活用状況の把握,3)東海3県および兵庫県の全自治体を対象としたハザードマップの整備・提供状況の悉皆調査などを実施してきた.その結果,普及の著しい携帯端末を利用して,避難判断に役立つようにハザードマップの「情報品質」を高めることと,自主防災組織の安否確認システムの開発が必要であるとの中間的結論を得た. そこで,最終年度の研究では,携帯端末を利用して,自治体が整備・公開している各種ハザードマップを参照し,GPS機能で取得した現在地および周辺のハザードの有無を判断して,多言語対応のテキスト情報ならびに分かりやすいサインで表示するとともに,事前登録された家族や自主防災組織のメールアドレスにワンタッチで現在地と安否状況を伝達できる防災アプリケーションのプロトタイプを開発し,全国を対象とするウェブ調査を実施してその有効性の確認を行った. 今後は,ハザードマップのオープンデータ化を進めている自治体との共同研究で開発中の防災アプリケーションの有効性の実証研究を進め,研究をさらに進展させていく予定である.
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