平成26年度においては、研究課題の仕上げとして昨年度に執筆した英文論文の分析を深めていくとともに、日本語論文の執筆を行った。英文論文については6月のAsian Finance Association Annual Meeting (Indonesia)と12月のWorld Banking & Finance Symposium (Singapore)で報告を行い有益なコメントを得た。これらのフィードバックを参考に、純粋持株会社への移行が企業価値の低下をもたらす効果の頑健性を統計的により深く検証するとともに、様々な代替仮説の検証を行った。これら分析の結果は、持株会社構造自体が企業価値に大きな影響を及ぼしていることを示すものであった。こうした追加的な分析を織り込んだ修正稿をFinancial Managementへと投稿し、現在は修正後再審査(revise and resubmit)の段階にある。
日本語論文については、持株会社を含む多角化企業の企業価値とコーポレートガバナンスの関係に注目し、執筆を行った。企業のガバナンスシステムを所有構造、取締役会、情報開示に関わる15変数で捉え、それら変数の合成指数と多角化が企業価値に及ぼす影響を、両者の交差効果も含めて計量的に分析した。この論文における研究成果は財務省財務総合政策研究所の研究会にて報告された後に、『フィナンシャルレビュー』にて刊行された。この論文は英文版も刊行予定である。
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