研究課題/領域番号 |
24530424
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
間嶋 崇 専修大学, 経営学部, 准教授 (20352015)
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研究分担者 |
宇田川 元一 西南学院大学, 商学部, 准教授 (70409481)
四本 雅人 明治大学, 研究知財戦略機構, 研究員 (90547796)
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キーワード | 国際情報交換(アメリカ) / 経営組織 / 倫理 / 実践 / 組織の倫理化 / ナラティヴ / ストーリーテリング |
研究概要 |
本年度(25年度)は,昨年度(H24)の研究成果を踏まえ,①理論的なさらなる検討と②広範なインタビュー調査を実施し,以下のような成果を得られた。 まず①については,昨年度の検討によって本研究における重要性が明らかになったアクターネットワークセオリー(ANT),ストーリーテリング(ST)研究についてさらに検討を進め,理論的フレームの精緻化に努めた。それにより,ANTの代表論者ラトゥールの翻訳(者や物の関係性/連関から生じる事実構築)概念,またそこにおいてボージェのST倫理(対話を通じ,さまざまなアクターの声によって織りなされる流動的な倫理)が重要であり,これら2つを結びつけたフレームの構築(者や物による開かれた民主的な“語り合い”によってそこでの倫理が構築されていく)が重要であることがわかった。 つぎに②について,倫理化に熱心な製造業や医療機関へのヒアリング,電力会社のビデオ会議映像の調査を実施し,理論的フレームについて現実的な吟味を行った。それにより,上述の理論的フレームの現実妥当性が確かめられつつあると共に,明文化された経営理念や倫理諸制度が日常的実践の倫理化に対してこれまでの研究(理論的規範主義アプローチ)とは異なる意味での重要性があることがわかってきた。つまり,理念や倫理制度が日常的な語らいや実践に対してそれを規定するものとして機能するというより,それらが従業員の日々の実践や問題意識に結びつき,制度が示す倫理が自分のものになっていく(日々の実践で感得した自分なりの倫理観と多くは事後的に結びついてそこでの倫理観を強めていく)ひとつのきっかけになっているということである。 なお,以上の内容は,日本コミュニケーション研究者会議,SCOS(Standing Conference on Organizational Symbolism),日本経営学会経営学論集などで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究レビュー(それに伴う理論的検討),インタビュー調査を通して昨年度の成果をさらに推し進めることができた。具体的には,重要な理論的コンセプトがかなり明確になり,焦点がかなり絞りこめてきたこと(特に者と物の連関への気づきという進展があったこと),また調査によってそれらの現実的な妥当性が確かめられつつあること(特に,既存研究とは異なる意味での倫理諸制度の役割が見い出せたこと,経営理念の重要性に気づいたことが大きな進展であった。詳細は「研究実績の概要」を参照のこと)の2点における進展が今期の大きな成果である。また,国内外での報告において他の研究者(専門家)から一定の評価を得られたことも収穫のひとつである。着実にリサーチクエスチョンの解に近づきつつあると感じている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である26年度は,さらに“倫理化”の実践に肉薄したい。25年度の研究によって日常的な実践における対話の重要性,そこでの理念や倫理諸制度の役割について見えてきたが,いかなる対話が重要なのか,いかなる制度とのかかわりが望ましいのか,より詳細な部分はまだ不明確である。理論的検討(道徳哲学とりわけネオプラグマティズムなどや,ナラティヴセラピーなどの検討)はもちろんのこと,25年度のリサーチサイトにさらに踏み込み(同サイトの多様な立場の複数人の方へのヒアリングなど),これまで以上に深い調査を実施,さらには国内外での情報収集(Academy of Managementや日本経営学会,組織学会など)を行い,リサーチクエスチョンに対する解にさらに接近していきたい(一定の解を明らかにしたい)と考えている。なお,研究成果については,学会報告(日本マネジメント学会関東部会,経営哲学学会全国大会,組織学会年次大会,Academy of Management年次大会など),論文投稿(組織科学など)を予定している。
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