本研究は、オーナーシップマネジメントの継続性を高めるための経営の変革に焦点を当て、特に財務論的な観点から効率的な事業承継がなされているかについて評価を行うことを目的としている。具体的には、まず、継続的に発展を遂げてきている企業で行われてきた経営の変革、特に財務管理、あるいは財務的な変革を調査し、特徴を探るとともに分類・整理を行う。次いで事業承継された企業が、承継前の経営者によって蓄積された経営資源を毀損することなく有効活用して効率的な経営が行われているかという観点からの分析である。 本年度においては、理論、実務の両面から、オーナーシップマネジメントの継続性およびそのための重要な機会である事業承継を分析対象として、効率的で望ましい姿を明らかにすることに努めた。そのためには、単純なデータ解析によって傾向を示すだけにとどまらず、実際に中小企業の現場において役に立つであろうモデルを構築することを念頭に置いて調査、研究を行ってきた。このことについては、同族企業、事業の継続性、事業承継に関する先行研究のレビューを行いながら、オーナーシップマネジメントについて財務論的な立場からの理論構築に努めた。 これと並行する形で、中小企業、とりわけ新規創業企業の財務管理上の特徴や課題に焦点を当て、こうした小規模企業が抱える問題点のみならず経営変革に関する実態調査を行った。前者のオーナーシップマネジメントについての理論構築では研究結果の公表までには至らなかったが、後者の新規創業企業における財務管理上の特徴や課題の抽出については、これをまとめて単行本として刊行した。さらには、アメリカにおける近年の研究動向を調査すべく、スタンフォード大学及びカリフォルニア大学バークレー校を訪ね、文献調査及び講義を聴講した。
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