第一に本課題研究の集大成として、京都のミネルヴァ書房から2017年7月に『決断力にみるリスクマネジメント』を刊行して成果を盛り込んだ。具体的には、第3章「事業承継とリスクマネジメント」(分量39ページ)と第4章「健康経営とリスクマネジメント」(分量39ページ)である。 第3章「事業承継とリスクマネジメント」では3つの事例研究をまとめ上げた。本書のケース6として「大塚家具の経営権をめぐる一連の騒動と対立」(大塚家具の事例)、ケース7として「モンダヴィのフランス撤退と事業承継への影響」(ロバート・モンダヴィ・ワイナリーの事例)、ケース8として「日本の老舗企業における事業承継の事例」(堀金箔粉など)である。ケース6は、親子間の葛藤を事業承継のリスクと捉えて分析した。ケース7では、ファミリービジネスの事業承継の要諦をまとめた。ケース8では、老舗について事業承継に関わるリスクのマネジメントに成功した企業と位置付けて分析し、老舗の成功要因を分析した。 第4章では1つの事例研究と1つの日仏共同研究について取り上げた。本書のケース9として「サンスターの健康道場を中心とした全社取り組み」、ケース10として「中小企業経営者のメンタルヘルス 日仏の事例」である。それぞれ事業承継の不全、つまり事業承継リスクが先代経営者や後継経営者の心身の健康及ぼす影響という視点につながる研究である。 第二に、事業承継が当該経営者の健康の及ぼす影響という視点を含む、中小企業経営者・個人事業主の健康に関する日仏共同調査を継続して実施し、その中間段階の成果を日本経営学会全国大会で報告すると共に、『商工金融』2017年10月号に論文として発表した。同時に、日仏共同調査に参画しているロッテルダム大学のロイ・チュリック教授を招いて東京2回、大阪3回、学術講演会を開催した。これらは業界紙に紹介され、社会的貢献の一端を担った。
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