研究課題/領域番号 |
24530441
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
船岡 健太 九州産業大学, 商学部, 講師 (30615357)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 新規株式公開 |
研究概要 |
平成24年度においては、まず、中国の新規株式公開市場における過小値付けを取り扱った先行研究のレビューを実施し、先行研究で検出された過小値付けの要因について確認を行った。これまでの中国の新規株式公開市場の過小値付けに関する先行研究は、主板市場を対象とするものしか存在しない。この主板市場を対象とする先行研究で検出されている過小値付けの発生要因が、本研究が注目する創業板市場ではどのように変化しているのかについて観察するために、創業板市場における各新規公開企業の目論見書より必要なデータの採取を行った。 先行研究で示された過小値付けに有意な影響をおよぼす変数のなかで、公開価格決定日から売買開始日までの日数の長さ、PER(株価収益率)の大きさ、公開株式の応募倍率に注目し、分析を実施した。分析の結果については、創業板市場においては、先行研究で示された主板市場のデータと比較すると、公開価格決定日から売買開始日までの日数は短く、PERについては30倍という上限はなく、公開株式の応募倍率については小さいという状況が示された。上記の分析に加えて、初値の水準を議論する材料の一つである長期の株価パフォーマンスに関する分析について、準備(文献レビューおよびデータセットの構築)を開始した。 平成24年度における本科研費に係る発表論文は、「中国の創業板における短期株価パフォーマンス」(川村雄介監修・著、日本証券経済研究所編『最新中国金融・資本市場』金融財政事情研究会、pp. 147-172、2013年2月)、および「中国の創業板市場の新規株式公開における長期株価パフォーマンス」(『商経論叢』vol.53.No.03、pp. 153-172、2013年3月)である。また、2013年3月に証券経済学会九州部会において、「中国の創業板市場の新規株式公開における長期株価パフォーマンス」の題目で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度においては、創業板市場における過小値付けの要因に関する基礎的な分析および先行研究との比較を実施し、論文による研究成果の公表もすることができ、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降においては、先行研究では使用されていない、創業板市場固有のデータを用いて分析を進めていく。創業板市場では、新規株式公開時における公開価格を決定するために実施されるブックビルディング(需要の積み上げ)に参加する機関投資家の属性別(証券会社、外国適格機関投資家等)にどのような価格を提示したのかという情報を公開している。 新規株式公開時において、このような投資家の入札情報を公開している例は世界的にみて創業板市場のみであると思われる。これまでの先行研究においては、データの制約により詳細な分析を実施することができなかった部分に光をあてることにより、先行研究で検出されていない新エビデンスの発見が期待される。 また、長期株価パフォーマンスや中小企業板との比較なども実施していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度以降の研究費の使用については、「今後の研究の推進方策」に記した機関投資家の属性別の分析などの実施にあたり、文献費、データ整備に係る人件費、新たな新規公開企業の目論見書等の開示資料の印刷費が必要となる。 研究成果のアウトプットとして、学会報告や海外ジャーナル等の各種雑誌に論文を投稿することを考えている。これらの学会報告に係る旅費、および英文ジャーナルへの投稿に伴う、ネイティブチェックの費用や投稿料が必要となる。 未使用額が発生した理由としては、購入した物品等が予定より安価で入手できたこと、アルバイトのデータ整理等にかかる作業を効率よく進めたことで人件費を抑えられたことがあげられる。
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