中小複合型医療機関の「すぐれた経営の要点と課題」について、インタビューに基づいて仮説を構築、アンケート調査と公開データによる検証を試みた。 しかし、幅広い内容のデータをもとにした分析とするために、初年度途中から日本医療福祉生協連合会本部の協力を得て、医療福祉生協の中から複合的な経営で、200床未満の病床をもつ全国の38の生協法人データを得て、これを基に研究を進めた。 まず「すぐれた経営」の指標として、主としてに2010年~2011年の収益性を用いて、その指標と、財務や診療の指標との相関をみながら、何がその要因をなっているのかを分析した。 その結果、大きく分けて2つの軸が考えられた。 一つは、経営戦略的な要素である病床規模や病床利用率であった。 これは地域における診療機能の選択の結果が大きく反映されていると考えられる。 もうひとつは、経営管理的な要素であり、人件費率、生産性などの組織管理面で優れた経営をしている生協法人は収益性が高いということである。 また38件すべてのデータではないものの、職員満足度の高さ、看護師の離職率の低さは、収益性との相関が認められた。 結局、経営としての優位性の築き方は、診療報酬に直結する経営戦略の選択(収入面)と、人材の活用面でオペレーションの巧みさ(コスト面)との2面あり、双方優れている場合には継続的な優位性を築くことができ、事業の成長スピードも速いことがわかった。 ただ、今回の研究は収益性との相関関係から、経営戦略と組織管理の2面の要因があるという所までの、短期的なデータにもとづく仮説的な結論しかえられておらず、双方の因果関係についてより深く実証するところまではいっていない。 また、東西日本の比較は別途マクロ的な診療圏の病床利用率の分析に留まった。 今後は、この研究を継続し、より長期のデータの実証的分析を行っていく予定であり、すでに着手している。
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