研究課題/領域番号 |
24530451
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桑嶋 健一 東京大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50313086)
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キーワード | 製品開発 / 機能性化学 |
研究概要 |
本研究の目的は、近年日本が国際競争力を発揮している機能性化学産業における製品開発システムの形成過程を明らかにすることにある。分析アプローチとしては、歴史的視点によるケース・ベースの実証分析を採用している。具体的には「競争力を持つプロセス産業」と「競争力を持つ組立産業」とで、製品開発システムの形成過程にどのような共通点や相違点があるのかを考察するために、機能性化学品と自動車を中心とした日本が国際競争力を持つ組立系の製品・産業とを比較する。また、同じプロセス産業において競争力を持つ製品群とそうでない製品群とを比較するために、機能性化学品と汎用化学品、医薬品等の比較を行う。 本年度は、機能性化学産業の黎明期から機能性化学品の開発・販売を行い、長期に渡って競争優位を持続している企業を中心に調査を実施し、プロジェクト・ベースの事例分析を行った。その結果、機能性化学産業における製品開発や事業開発の既存研究で指摘されてきた粘り強い用途開発、提案型の製品開発、「顧客の顧客」戦略、技術蓄積、顧客との連携、特許戦略といった要因に加えて、本事例では、初期の製品開発を通して構築された統合型(すり合わせ型)のビジネスモデルが、持続的な競争優位に貢献したことが分かった。本事例分析を通して、本研究の主眼である日本の機能性化学産業の製品開発システムの形成過程の一部が明らかになったと考える。なお、本研究成果は、東京大学ものづくり経営研究センターのディスカッション・ペーパーとしてwebに掲載されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の達成度は、ほぼ当初の計画通りである。本年度は、詳細な事例分析を実施できたのが大きな成果である。昨年の達成度評価では『機能性化学企業を対象とした調査に関しては、事例の掘り下げについては当初予定していたレベルまでの調査は実施できなかったが、その代わりに、調査の範囲に関しては、2年目に予定していた総合化学企業に対する調査を前倒しで行った。これは、調査対象企業に協力いただけるタイミングを優先したことによるものである。全体としてみれば、調査の順番が一部入れ替わっただけで、研究計画の実施自体には全く影響が無いので、研究計画の達成度評価としては、ほぼ当初の予定通りに進んでいると言える』と評価したが、今年は前者の「事例の掘り下げ」を当初の予定通りに実施することができた。よって、全体として順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は、昨年度に引き続き、機能性化学企業、総合化学企業(機能性化学部門・汎用化学部門)の製品開発システム・レベル、企業・事業戦略レベルの調査を行い、ケース作成に取り組む。本研究のように、歴史的視点を踏まえた 詳細なケース作成には多大な時間がかかるが、地道に作業を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の海外学術雑誌への投稿にかかる費用を視野にいれ、今年度の支出を抑えた。 昨年度より繰り越した経費については、海外学術雑誌への投稿に使う予定である。
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