研究課題/領域番号 |
24530452
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 与洋 東京大学, 農学生命科学研究科, 特任研究員 (00422460)
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研究分担者 |
筧 一彦 東京大学, 産学連携本部, 特任研究員 (90345116)
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キーワード | 産学連携 / 組織マネジメント |
研究概要 |
産学連携はその目標の実現が当然重要であるがその実践的な組織マネジメントは必ずしも十分理解されていない。実務者の観点からマネジメント上の課題抽出と検証の場として、平成24年度採択の経済産業省の「産学連携イノベーション促進事業」の一つである「産学公民連携による被災過疎地の持続的発展を促進するイノベーションモデル創出事業」(平成24~26年度)を得ている。企業35社と20名近い研究者から構成される「多対多参加方式産学(官)連携モデル」で被災地岩手県大槌町の震災からの復興を契機として普遍的な過疎地活性化に向けたイノベーションを探るという事業に運営代表者として関わることになっている。 平成25年度は、具体的な組織運営の基本方針を定め個別課題をスタートさせた。①大槌町の策定した復興基本計画の「施策」の中で、特になりわい(生業)の復興と創出、暮らしの復興と創出に貢献するべく活動する。②首都圏にある大学が持つ既存企業等とのネットワークを活用した産学連携の組織と、地元事業体・自治体・住民と連携する「産学公民連携」で実施する。③被災地のみならず我が国市町村の半分近くを占める他の過疎地にも適用可能な普遍性を追求する。多様な関係者が参加する事業であり目的達成に向けた組織運営の基本方針を下記のように定めた。①責任者(CEO)と運営代表者(COO)が全事業の統括を行う。②豊富な実績にもとづく基礎力と実行力を持つ既存企業の貢献を引き出し、その人材を大学研究者の監修のもとで活用する仕組みを構築する。③地元事業者や住民、町役場との意見交換を進め連携を呼びかける。④指揮命令マネジメントになじまない大学研究者をソフトにマネジメントし目標に向かう。 多対多産学公民連携について課題抽出と課題設定を進め、NPO等のネットワーク型組織に有効な組織マネジメントを探る。 企画について学会発表1件し、招待講演2件を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的な多対多参加方式産学連携を実践的に構築仕様とするときその検証の場を得ることが必要である。またその際、その組織が目標向って機能敵に推進している組織である必要がある。またその組織全体活動を見据えることができる立場につくことが有効である。この観点で、最適な環境に自らを置くことができた。すなわち、実証すべきプロジェクトが経済産業省の事業として採択され本研究者は運営代表者として目標に向かって活動する中で、最善の組織マネジメントの責任を負う立場で多対多型産学連携の課題抽出や実証を実施できる機会を得ている。平成24年の企画期間を経て本事業は平成25年4月から2年間の活動が可能となる。被災地での復興を主たる課題として産学公民連携を実施するために町役場に本事業の拠点として事務所を開設することができた。活動費の支援もあり高頻度の訪問が可能となっている。具体的な活動目標達成に向けた格好の実践の場を得ている。「なりわいの復興では、林業、水産業、観光を、「暮らしの復興」ではモビリティ、コミュニティ再生、ICT普及を主たるテーマとして設定した。着手できる課題については早々に着手し、一方具体化に向けて、企画の精度を上げるべきプロジェクトについては大槌町住民や事業者との意見交換を繰り返し、ほとんどのプロジェクトが立ちあがってきている。具体的な成果の達成目標に向けた活動を始動させると同時に、組織マネジメント上の課題も顕在化してきており、今後の考察に備えたい。本事業企画段階の課題とそれからの学びについては学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
稀有な環境とポジションにいることを最大限に活用して、ネットワーク型の多対多参加方式産学公民連のマネジメント課題に取り組んでいく。引き続き、経済産業省「産学連携イノベーション促進事業」で採択されている「産学公民連携による被災過疎地の持続的発展を促進するイノベーションモデル創出事業」を運営代表者として目標達成に向けてマネジメントして行くことが本課題の質の向上につながる。このプロセスを通じて、多様なステークホルダーと多様な参加メンバーと議論を重ねながらマネジメント上の課題の明確な認識と解決に向けた試行を繰り返し、課題の抽出と論点整理をとおして組織マネジメント上理論化を進める。解くべき課題としては、例えば、企業経営組織の「指揮命令型組織」とは異なる、緩いネットワーク型産学公民連携組織を如何に目的達成に向けて推進していくか。また、多くのステークホルダーからなる産学公民連携では、被災住民にとっての緊急のニーズは「住むところ」と生活のベースになる「なりわい」であり、地方公共団体の最優先度の行政課題は被災地の町と産業の復興であり、「よそ者である」産学の提案を将来を見据えていかに整合し実装して行くことが出来るか。組織の境界はどこに置くべきか。被災過疎地の課題を継続的に解決するにはソーシャルビジネス精神が必要になる。いわゆる社会的価値と企業価値の両立を図るビジネス創造はできるか。素子として類似の課題を有するボランティアや住民の参加、場合によっては行政と強い関係を有するNPO等の組織マネジメントにいたる示唆が得られるか。 本経産省採択事業の実施期間は平成24年度の計画、平成25年度、26年度の実施期間からなっており、今年度で一定の事業成果をまとめる時期であり、本研究も同期して推進していくことになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本科研費補助金は3か年であり、平成24年度~平成26年度の予定となっている。 図書購入費、旅費、消耗品購入を予定している。
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