研究課題/領域番号 |
24530455
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
近藤 正幸 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (40170435)
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キーワード | 国際情報交換 / タイ |
研究概要 |
平成25年度は、ボリューム・ゾーン/BOP向け製品の設計・開発の後の新たな現地の供給業者を取り込んだ生産体系を想定して、日本本社の調整は受けつつ、周辺国の姉妹企業とも連携しつつ、途上国の現地企業が主役を務めるといったパラダイム変換ともいうべき生産体系の再構築を織り込んだネットワーク型の製品の設計・開発体制を想定し、情報収集を引き続き実施するとともに、特許分析により日本企業の海外研究開発活動を分析した。 具体的には、先ず、ボリューム・ゾーン/BOP向け製品の開発・販売に関するインターネット等による情報収集を実施した。その上で、日本国内及び途上国におけるインタビュー調査を実施した。日本国内におけるインタビュー調査については、海外統括部門においてボリューム・ゾーン/BOP市場向けの事業戦略とそのための製品開発戦略、生産戦略について、首都圏において実施した。途上国における資料収集・インタビュー調査については、タイにおいて、日系企業、日本貿易振興機構、現地の大学等で実施した。その結果、タイでは自動車産業を中心に製品の設計・開発機能が集積し出しているのに対応して、日本政府も支援して開発人材の育成に取り組んでいることが分かった。また、タイの工科系大学の学生の就職意識についての調査をタイの大学の教員と共に企画・実施した。 特許分析についてはタイに出願された特許や米国に登録された特許を用いて日本企業のタイにおける知的財産創出活動を分析した。このほか、日本企業の他の途上国における特許創出の状況についても米国登録特許データベースを用いてデータ検索を行った。 学会においては、日本企業のタイにおける知的財産創出活動や日本企業の中国における研究開発マネジメントについて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外でのインタビュー、インターネット等による情報収集をもとに前年度に構築した日本企業がボリューム・ゾーン/BOP向け製品開発について研究の枠組みに基づいてインタビュー調査等をさらに進めると共に、米国特許を用いた定量的分析により、日本企業のタイにおける知的財産創出活動が明らかになってきた。 ボリューム・ゾーン/BOP向け製品の開発拠点については、市場国に開発拠点がない場合は開発拠点が存在する他の途上国で新製品の設計・開発が行われる。例えば、インド向け家電製品の開発を研究開発拠点があるマレーシアでインド系の技術者を中心に実施している。この場合でも、基幹部分の技術的に高度な要素については、日本の技術が活用されている。また、タイでは試作専門企業の能力拡充が進展しており、現地日本メーカーにとっても作業の効率化が図られているという感触を得た。 特許分析からは、日本企業が多くの国で特許を創出していることが分かってきた。タイにおける詳細分析では、現地ではタイ人エンジニアのウェイトが高まってきていること、日本にいる日本人エンジニアの役割は引き続き重要であることなどが分かってきた。 タイの工科系大学の学生の就職意識についての調査では、日本人の学生に比べて、独立志向や転職志向が強いこと、また、一度就職してからの大学院進学志向も結構あることなどが分かってきた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成24年度、平成25年度の成果を踏まえて、さらに、研究を深めるとともに範囲を広げたることにより発展させたい。 研究の深化については、タイに中央研究所まで設立した日系企業の基礎的な研究から製品開発、実際の生産までの流れの中での人材育成や知的財産の管理、さらにはタイの大学や公的研究機関、政府との関係について、調査を実施したい。また、タイで機能が拡充された生産試作の専門企業の現地日本メーカーへの貢献の状況についても深堀をしたい。 タイの工科系大学の学生の就職意識についての調査では、転職の動機等について調査を実施するとともに、就職や転職に関する意識について、性別、専攻、成績などの学生の属性により、優先順位がどのように異なるのかといったより深い分析を実施したい。 研究の範囲拡大については、対象とする産業を製造業だけではなくサービス産業まで拡大したいと考えている。地理的にも、中国、ASEAN,インド等についても特許分析を実施していくとともに、現地調査を実施していく予定である。 また、引き続き、国際学会等で海外の研究動向の情報収集や研究者との情報交換を行うとともに、それまでに得られた知見を学会において発表して他の研究者からのフィードバックを得て、研究の取りまとめを図っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
タイにおけるデータ検索作業の一部を大学教員の協力者が自ら実施したため、2万円強の残高が発生したため。 データ検索、集計等の作業の人件費の一部に使用する計画。
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