平成26年度は、インタビュー調査では、国内でも実施していない組み立て加工を装置型産業の日本企業が中国で挑戦して成功し、新製品開発も視野に入れるとともに、他の途上国へも横展開を成功させている事例を調査し、一定の要件が整えば可能なことが分かった。タイでは、中央研究所を立ち上げた日系企業がタイ政府とも連携して研究開発の新たなネットワークづくりに尽力し出しているが、途上国での基礎的研究にはその国の研究開発能力の底上げとネットワークづくりが重要であることが分かってきた。ミャンマーでは日系企業によるソフトウェアのアウトソーシングとミャンマー国内市場向けのソフトウェア業務の拡大、コンピュータ大学(ヤンゴン)による多国籍企業との連携の状況がわかり、ソフトウェアの分野では進展が早いことが分かった。 アンケート調査では、タイの工科系大学の卒業生の転職志向について、現職への満足度が高くても一定程度は転職の意向を有していること、現職に不満で転職の希望が強い者は元々の就職時の動機が不明確な者が多くまた転職時の選択基準は給与が大きな要素であることが分かった。 米国登録特許データベースを用いた分析では、日本企業は多くの新興国においても現地人材を活用して特許や意匠を創出していることが分かった。中国では、タイの場合と異なり初期の段階から特許創出において中国人を活用していること、日本にいる技術者も発明者の一角を終始占めていることなどが分かった。 3年間の研究を通じて、日本企業がアジアの中で生産拠点だけではなく製品開発拠点も展開し、そのための試作や試験・不良解析/故障解析を行う専門企業もアジアに進出し出しているし、そのありようも一国にとどまらず、アジア内でのネットワークとして機能し出していることを明らかにした。そうした状況の中でも日本本社の役割は特許分析から見ても重要な役割を依然と果していることも明らかにした。
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