研究課題/領域番号 |
24530460
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
亀岡 京子 東海大学, 政治経済学部, 准教授 (80589614)
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研究分担者 |
福嶋 路 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (70292191)
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キーワード | 製品開発 / 技術評価 / 研究開発マネジメント / 医療機器 / 福祉・介護機器 / 医療用ロボット / 感性工学 |
研究概要 |
今年度は、福祉機器の開発部門を持つリハビリテーション病院施設への聞き取り調査を実施した。具体的な訪問先は、独立行政法人労働者健康福祉機構に所属する総合せき損センター(福岡県飯塚市)および吉備高原リハビリテーションセンター(岡山県)である。これらの施設は、就業中あるいはスポーツや日常生活における不慮の事故によって脊椎を損傷した人たちに向けて、リハビリテーションを行っている。ここで開発し設計する製品は、多くの入院患者の日常生活支援用の機器や、リハビリテーション療法を支援する機器であり、生産は地元の中小企業に委託する。 次に、仙台市とフィンランドとの国際共同プロジェクトに基づき設置された仙台フィンランド健康福祉センターにも聞き取り調査を実施した。ここは地域住民に対する行政による福祉サービスを行っており、福祉介護機器の製品開発を行う部門も持っている。本施設に入院することはできない。ここにやってくる患者もリハビリテーションを目的としているが、高齢の患者が多い。 最後に、福祉先進国デンマークでの介護器具や福祉機器等の開発を調査しようと試みたがコンタクト先を見つけられなかった。しかしながら、コペンハーゲンに長く居住し、介護の仕事に20年以上携わって介護現場を良く知る方から、介護者の身体的負担を減らすデンマークにおける介護方法についてインタビューすることができた。その結果、デンマークでは福祉・介護機器の設計は患者だけでなく介護者の負担を減らすことが考えられていることが分かった。 なお、平成25年度は医療機器に関する製品開発も調査する予定であったが、予備的調査の段階で、手術用ロボット分野の調査は進めないことにした。それらの大型機器の開発は、医師の評価によるところが大きく、パワー関係も存在するためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度および25年度の2年間で、介護用ロボットや新しい医療機器の動向を探ったほか、福祉施設等で介護用品や福祉機器の開発について調査を行うことができた。しかしながら、介護用ロボットや新技術の医療機器についてはメーカーへの聞き取り調査がまだ実現できていない。その理由は、介護用品と医療機器ではかなり使われている技術に大きな違いがあり、あまりにも幅広いために、当初の研究の問いに対する答えが収斂しなくなる可能性を感じ始めている。 また、新規技術に関する機能や性能評価をするための組織プロセスやマネジメントについては、筆者がこれまでに医薬品企業が行ってきた研究開発プロセスに近いものがあるのではないかと考えてきたが、これもまた製品分野によって大きく異なることが分かってきた。 本研究はもともと現実の事象について問題意識を持ち、それを説明できる理論を探索してきた。しかし、ここに至って、因って立つ理論の探索が困難な状況になってきた。つまり、既存研究で扱われてきた分野は経営学というよりも、デザインや感性を扱う分野であると当初から予想していたが、それらと経営学との接点を見つけることが非常に難しいことが分かり、当初の計画よりもやや遅れている原因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は介護用品や介護機器に関して、デンマークにおいてさらに調査を深め、ヒューマンインターフェイスについて患者目線だけではなく、介護者の利便性や快適性についてどのように考えられているかを調査する。 さらに今年度は新たに、再生医療に関する医療機器について調査を行う。それは、人工皮膚などの医療に用いられる製品で、その安全性や機能性を担保するための評価基準や評価方法について、聞き取り調査等で確認する。これは日本ではまだ研究が進行中の成果ではあるが、欧州では既に薬事法の認可も取得し、実際に使用されている製品である。 さらに、新たに研究分担者を一人増やし、ロボット先進国の米国の状況を調査する。日本でもロボットスーツなど介護や生活支援の場を想定して開発は進んでいるが、本当に実用できるかといえば、まだ難点がある。米国ではどのように技術を応用し、デザインや機能、操作性などどのような製品開発を行っているのかを調査する。 以上のような聞き取り調査を行った上で、理論についても明らかにしていきたい。これまで経営学にはあまり取り上げられていなかった理論との接合を試みてきたが、極めて難しい状況になっている。そのため、上記のような製品の研究や製品開発プロセスにおいて、どのような知識がどこにあって、どのように集約され、新たな製品になっていくのか、また、その機能性・安全性・効果をどのように評価していくのかを既存研究で明らかにされているところと、そうではないところによって明確に検証することで、新規分野における技術の評価プロセスや評価基準の特徴的なポイントを明らかにしていくことにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外出張の渡航費が当初予想していた運賃よりも少なかったことが理由である。この事由が発生したのは海外出張の時期を変更したためである。当初、建学祭期間に渡航を計画していた。しかし、ゼミ生4年生が建学祭に模擬店を出店することとなり、ゼミ活動の一環として行事を計画したため、その期間中に渡航する予定を変更した。結局、3月中旬の海外出張となり、渡航先が北欧であったこと、休暇期間ではないことなどから航空運賃が抑えられたためである。 次年度使用額が生じた分を合わせて、別の研究者にも海外出張を依頼しようと考えている。2012年度、2013年度の2年間であまり手を付けられなかったロボット研究について、その分野に詳しい研究者を交えて、米国のロボット応用実験や実践的な活用事例を調査する。
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