研究課題/領域番号 |
24530463
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
五十嵐 伸吾 九州大学, ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センター, 准教授 (00403915)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / スウェーデン / アントレプレナーシップ / 起業プロセス / 起業機会 |
研究概要 |
国内研究については、アルプス電気盛岡工場のスピンオフに関する研究に関しては前段の研究に今年度の調査結果を付加したものを論文として発表した。論文発表に先立ち、調査内容を調査対象者にレヴューしてもらい記載内容の正当性及び客観性を確認することができた。 アルプス電気盛岡工場からのスピンオフ企業に加えて他の企業のスピンオフの調査に着手、今年度から起業家で出身者が多いとされるリクルートとIBMを対象に加えた。リクルートからのスピンオフした起業家4人と当初、起業の意思が高かったが結局社内に残った1人からプレ・インタビューを行った。同様に日本IBMからスピンオフした起業家にインタビューを行い、今後の調査の協力の確約を得た。アルプス電気、リクルート、IBMの調査結果から、起業機会のプロセスを進展させる、つまり従業員にスピンオフを促す状況は特定企業の文化・制度により起因するのではなく、企業内の一部の部署あるいは、企業の一定の時期に強く関係があることを示唆する発言を得た。 また、海外研究に関しては2012年9月及び2013年3月の2回、スウェーデンのチャルマース工科大学(CUT)を訪問し、大学からスピンアウトした起業家4人にインタビューを実施した。加えて昨年度、インタビューを実施した学生で、現在、CUTのプレ・インキュベータ・プログラムに参加中の学生12人にインタビューを実施し昨年度からの意識の変化を確認した。その調査結果を中間報告として、2012年9月の全国VBL大会、および2013年3月の「起業家人材育成に関するシンポジウム」(琉球大学主催)で基調講演として発表を行った。この調査からはアントレプレナーシップ教育がどのように起業プロセスに影響を及ぼすかの関係の分析に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内研究については、予定通りに推移した。アルプス電気に関しては論文を関係者にレビューした結果、新たな発見を期待できる発言を得られた。これに基礎として追加的な調査の必要性が顕在化してきた。一方で、IBMとリクルートのスピンオフを特定し調査する土台を固めることができた。 海外研究については、リサーチサイト確保に苦労している。しかし、特定の起業家予備軍の学生を定期的に調査することによって、時間の経過に伴う対象者の意識の変化がインタビューから明白であった。今後の研究を進めるうえで大きな示唆を得られた。一方で、その変化は、何が引き金となっているのか、例えば、教育そのものなのか、あるいは、プロジェクトのチーム間あるいはプロジェクトのチーム内部の相互作用によるものなのかは現段階では明らかではない。よって追加の調査が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
国内研究、海外研究ともに調査によって、いくつかの方向性を示唆する結果を得ることができた。よって、今後とも、当初の研究計画に従って済々とインタビュー調査を進めることが肝要であり、また、研究を推進することでより具体的な成果が得られるものと期待している。 また、昨年度の調査の結果、アルプス電気盛岡工場からのスピンオフに関しては新たな発見事実が浮かび上がって来ており、関係者の幅を広げて、より立体的で補完的な調査を追加的に実施することを計画している。これと並行してリクルートとIBMの調査も件数を積み重ねる。 海外研究に関しては、引き続きチャルマース工科大学の在学生及びプレ・インタビューを実施する。特に、本調査では時間の経過と意識の変化の定点観測が可能となっており、調査対象をさらに詳細に分析する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内研究に関しては、アルプス電気盛岡工場からのスピンオフに関しては周辺調査も含めて追加調査を実施する。IBM、リクルートのスピンオフに関しては計画書に従って済々と調査の実施を予定している。海外研究に関しても、引き続きスウェーデンの調査を継続する。スウェーデンの学期は5月末で終了するため、まずその時期の学生たちの意思決定を確認したのち、9月または来年3月に再度訪問し、実際の起業状況を確認する計画としている。よって、研究費の使途としては引き続き、盛岡、東京、スウェーデンを中心とする出張旅費が主な資金使途となる。
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