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2012 年度 実施状況報告書

ファミリービジネスの競争優位性の国際比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 24530469
研究種目

基盤研究(C)

研究機関大阪府立大学

研究代表者

上野 恭裕  大阪府立大学, 経済学部, 教授 (30244669)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードファミリービジネス / 伝統産業 / ヨーロッパ
研究概要

今年度は資料収集とその整理,これまでに行ってきたファミリー企業へのインタビューの要点整理,日本企業,韓国企業,ヨーロッパ企業への調査研究を中心に実施した。
ファミリービジネスに関する資料としてはCritical Perspectives on Business and ManagementシリーズのFamily Bussiness全集など論文集の収集と整理を行い,関連文献・資料の整理を行った。また,これまでに行ってきたファミリー企業へのインタビュー記録を整理し,論点の整理を行った。特に刃物産業についてインタビュー調査をまとめ,「伝統的事業システムの競争優位と課題―堺・関・燕の刃物産業の比較より―」という論文にまとめ,公表した。そこでは伝統を維持するための事業システムが問屋を中心となって形成されていることが明らかにされた。
また事業承継がうまく行われている日本のファミリー企業へのインタビュー調査を行い,ファミリー企業における新規事業創出の仕組みやネットワークの構築状況を明らかにした。また韓国のファミリー企業であるサムスン電子へのインタビュー調査を実施し,日本との比較研究を行った。サムスン・グループは多角化企業であり,単独のオーナー経営であるが,サムスン・グループが発展出来たのは,本社のスタッフ部門がオーナーを補佐する仕組みを作り上げているからである事が明らかになった。
一方,スウェーデン企業へのインタビューにより,企業と地域社会とのつながりが長期的な発展をもたらすことが示された。スウェーデン企業はその国土の小ささから,もともとグローバルな市場を目指して発展を遂げてきた。その過程で人材のグローバル化,多様化が進展したが,地域社会とのつながりを維持することにより,安定的な発展を可能としてきた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していた文献・資料の収集整理,既存研究の取りまとめは順調に進展している。さらにそれらの資料を利用し,特定の伝統産業の歴史的研究は刃物産業を中心に順調に進展している。今年度の研究で,伝統産業ではファミリーによる事業存続の目的追求と,それをサポートするスタッフ部門の重要性が明らかになってきており,伝統産業における事業システムの実体がある程度明らかになってきた。
インタビュー調査では当初は予定していなかった韓国企業へのインタビューを調査協力者の援助のもと実施した。それにより日本企業との比較という観点から有益な情報が得られた。またヨーロッパ企業へのインタビュ―を実施し,企業と地域とのつながり,地域企業の発展の過程をある程度明らかにすることができた。
今後は企業へのインタビュー調査をさらに進めていく事により,データの蓄積を図り,各国のファミリー企業が構築している事業システムの実態を明らかにしていく予定である。

今後の研究の推進方策

平成25年度は24年度の研究を発展させ,国内企業の研究を進めると同時に,その研究対象を伝統産業が多く存在するヨーロッパ各国へとさらに広げ,複数企業へのインタビューを実施し,その国独特のファミリービジネス発展の歴史を明らかにすることを試みる。具体的にはドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州に属するゾーリンゲンの刃物産業などを予定している。これは申請者がこれまで行っている堺刃物産業の研究結果や月桂冠などの日本酒産業との比較という観点から興味深い研究となる。
ゾーリンゲンは人口17万人の小さな都市であるが,その小さな都市に,刃物産業が集中している。そのような伝統産業の事業システムの強みを探るために,平成25年度にはゾーリンゲン地方の中小刃物事業所への質問票調査を予定している。このゾーリンゲンの刃物産業の中で,特にユニークな事業展開を行っているのがツヴィリングJ.A.ヘンケルスである。ツヴィリングJ.A.ヘンケルスは1731年に創業された刃物企業であり,1938年には料理ばさみを開発,2000年には鍋やカトラリーなどのクックウェアに進出するという多角化を行い,多様な製品群を保有する優良企業であり続けている。またこれら多様な製品で世界各国に展開している。このような積極的な事業展開とファミリー企業の事業継承の問題がいかに関係するのか,またゾーリンゲンという地方の特性とヘンケルスのような優良企業の発展にはどのような関係が存在するのかを詳細なヒアリング調査により明らかにしていく予定である。

次年度の研究費の使用計画

該当なし。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 伝統的事業システムの競争優位と課題―堺・関・燕の刃物産業の比較より―2013

    • 著者名/発表者名
      谷口佳菜子・上野恭裕・北居明
    • 雑誌名

      長崎国際大学論叢

      巻: 第13巻 ページ: 31-43

    • 査読あり
  • [学会発表] 機械工具商業界におけるネットワーク組織の研究2012

    • 著者名/発表者名
      上野恭裕・船本多美子・福田隆吉
    • 学会等名
      経営行動科学学会第15回年次大会
    • 発表場所
      神戸大学
    • 年月日
      20121117-20121117
  • [学会発表] 大学におけるアントレプレナーシップ教育の可能性-修士論文作成を通した新規事業開発の事例-2012

    • 著者名/発表者名
      上野恭裕・北山寛樹
    • 学会等名
      日本ベンチャー学会第15回全国大会
    • 発表場所
      武蔵大学
    • 年月日
      20121110-20121110

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公開日: 2014-07-24  

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