2014年度は、過去2年間にわたる調査をまとめる作業に入った。これまで米国と韓国の音楽作業をリードする会社や個人についてインタビューを行ってきたが、米国企業の国際化と韓国企業の国際化にはその根本的な考え方に大きな違いがあることを実感した。これを一言で表現すれば、市場をセグメント化し、それぞれのセグメントで競争優位を探り、ナンバーワンになろうとする米国企業の戦略と自身の生き残りのために国際化を余儀なく迫られる韓国企業の戦略の違いと言えるだろう。それに対し、日本企業の国際化は、韓国に比べれば国内市場に恵まれ、またアニメ音楽やアイドル歌謡など非常に狭いセグメントではあるが国際的に受け入れられているという事実がある。裏返せば、現状を受け入れているだけで、それを国際化の戦略とは言い難い。米国や韓国企業に対する調査から得られた知見をどう日本企業に活かすことができるか検討中である。この問題は当初想定していたよりも大きく、市場、政府、多国間戦略とダイナミックな分析枠組みが求められるところである。また、音楽産業自体の財務構造が公開されていないことが多く、会社、アーティスト、ディストリビューターでどのような資源配分と成果の分配を行っているかについて具体的に調査する必要がある。 頂いた予算については、2013年度の訪韓時に韓国コンテンツ振興院から入手した『2012音楽産業白書』を韓国語から日本語へ翻訳する翻訳代に使用した。これも内容について検討中である。
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