研究課題/領域番号 |
24530473
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
山本 寛 青山学院大学, 経営学部, 教授 (30240120)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | employability |
研究実績の概要 |
以下の研究書(単著)を出版した。 『働く人のためのエンプロイアビリティ』(2014年4月20日刊:創成社) 近年のリーマンショックなど、過去何度となく雇用に対する不安感がわが国、そして世界中の働く人々を襲ってきた。また近年では、働く若い人々を食い物にするブラック企業が問題となっています。そうしたなか、会社などの組織で雇用される能力を示すエンプロイアビリティが高いほど、意に添わず辞めさせられたりすることも少なく、また仮に辞めさせられても転職が可能となると考えられます。つまり、エンプロイアビリティが高いことは、終身雇用の崩壊、雇用の劣化や漠然とした雇用不安にさらされている多くの働く人々にとって、理想的な状態を示しているといえます。そうした観点から、本書では、転職だけでなく現在の会社で評価されてリストラされないという働く人のキャリア発達に欠かせない能力等を示すエンプロイアビリティについて考察しました。同時にグローバル化の観点から、わが国だけでなく、欧米の働く人々のエンプロイアビリティとの比較調査も行いました。 以下1回の学会発表を行った。「組織従業員のエンプロイアビリティ・スキルとエンプロイアビリティ知覚との関係」日本労務学会第44回全国大会(2014年7月20日:北海学園大学)。エンプロイアビリティに関する6回目の学会発表である。コミュニケーション能力や柔軟性など働く人のエンプロイアビリティを高めるスキルが、エンプロイアビリティを向上させるのか、そしてそれが、仕事への満足感やキャリアの見通しにプラスに働くのかどうかを分析した。 正社員を対象とする質問票調査の結果、スキルが高いだけでなく、現在の組織で評価され雇用が継続される(内的エンプロイアビリティ)という認識が満足感などをより高めることが浮き彫りにされた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究実施計画の中心は、既に実施した質問票調査データの分析結果を学会報告し、論文にまとめ、公開することであった。学会報告については、【研究実績の概要】に記したように、既に実施した。論文については、既に完成し、現在、研究計画調書に記したレフェリー付学会誌に投稿し、審査中である。 さらに、27年度執筆予定であった研究書については、【研究実績の概要】に記したように、既に刊行済みである。同書については、既に3件の学会誌および学術誌の書評において取り上げられ、好意的な評価を頂戴している。
|
今後の研究の推進方策 |
第1に、既に刊行された研究書(単著)について、さらに、学内外の研究者及び一般の勤労者の方々に発信していく。そのために、研究室のホームページをさらにリニューアルし、アクセスログによるサイトの分析によって、研究成果に関心を持った層を分析し、今後の共同研究や講演等、さらなる社会への発信につなげていく予定である。そのための専門業者への委託料を予算に計上する。 第2に、縦断調査を実施する。当初予定通り、アメリカおよび中国の民間企業の正規従業員に対する国際比較質問票調査を同時点で実施する。調査会社にインターネット調査を委託し、アメリカ、中国各200人、日本300人のデータ回収を目標とする。 第3に、調査結果の分析、発表等として、結果を入力したデータファイルを調査会社に作成してもらう。そのため、謝金等の予算を計上している。同データファイルについては、研究代表者が研究室に所有しているSPSS等の統計分析ソフトを使って分析する。 第4に、分析結果を学会報告、論文の形にとりまとめ、公開する。学会報告については、産業・組織心理学会、日本労務学会等を予定している。論文は学内誌(青山経営論集)、国内のレフェリー付学会誌(産業・組織心理学研究、日本労務学会誌等)、海外のレフェリー付学会誌(International Journal of Human Resource Management, etc)等を予定している。海外学会誌への投稿については、ネーティブチェックを専門翻訳会社に依頼し、予算に計上する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度、日本、アメリカ、中国3か国の勤労者に対するインターネット調査による国際比較調査を実施しなかったためである。理由は、わが国の経済事情の変動である。国際比較調査は、経済的な変動が極力少ない時期に実施することが望ましいとされる。エンプロイアビリティも景気等の影響を大きく受けることが十分予想される。この観点からすると、平成26年4月の消費税増税による景気の先行き不透明感、転職市場の動向の不安定さ等から、本年度の実施を見送った。少なくとも平成27年度は消費税増税は予定されておらず、現在のところ大きな景気変動要因は予測されていない。そのため、平成27年度実施とする。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度、調査会社にアメリカ、中国各200人、日本300人のデータ回収を目標とするインターネット調査を委託する。また、調査結果の分析、発表等のため、結果を入力したデータファイルを調査会社に作成してもらう。以上の費用に充当する予定である。
|