研究課題/領域番号 |
24530474
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
吉田 猛 青山学院大学, 経営学部, 教授 (00200999)
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キーワード | 起業プロセス / ベテラン起業者 / エフェクチュエーション / 小さな勝利 |
研究概要 |
本年度は、創業に関するアンケートの作成と、アンケートおよびインタビューの依頼状を起業者に宛てて送付した。アンケートは、エフェクチュエーションロジックがアンケート結果から析出できるように設計を行った。 まず第一の質問カテゴリーとして、創業年度と現時点で何回目の創業かということに回答してもらうことで、ベテラン起業者であるか否かの確認を行った。次に第二のカテゴリーでは、現時点で事業の中核となる製品やサービスを創業時点の製品サービスと比較してもらうことで、どの程度変容を遂げたか、それは創業時点で創造できたものか否かを回答してもらっている。これはエフェクチュエーションロジックにおける不確実性の対応に関連しており、本ロジックの中でも重要な部分である。第三のカテゴリーは、創業支援者に関する質問項目である。どのようなロジックを採ろうとも支援は重要であることは間違いないが、創業前と創業中に分けてその変化を探り出そうとするものは少ない。本研究ではそこに焦点を当てている。第四のカテゴリーは、ビジネスプランの作成に関するものである。ここはエフェクチュアルロジックを採るか否かの分岐点を象徴的に示す項目である。五つ目のカテゴリーでは、変化への対応策および変化に対応する際の心構えが問われている。創業に関するアンケートは実態調査が多く、本アンケートのように仮説を検証しようとするものは少ない。その点で極めて意義深いものと言える。また、同時に行ったインタビュー調査は、通常の創業プロセスに対するものではなく、架空の創業プロセスに対して、同様の質問を異なる起業者に行う形式を取り、異質(各起業者自身の創業物語)の中から同質なものを取り出すのではなく、同質な問い(架空ケースにおける意思決定)の中からより抽象度の高い同質項目(共通の意思決定スタイルや意思決定において重要と考えられる項目の選択)を取り出すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年度に終了予定であった起業者とのインタビュー数を50に近づけようとして起業者の方々にアンケートと同時に依頼を行ったため、インタビューが25年度後半まで続けざるを得なかった。そのため、インタビュー内容のテキスト化およびコーディング作業は25年で中にすべて終えることができていない。26年の前半にはそれを終了し、カテゴリーかとエフェクチュエーションロジックとの対比を行う予定である。 他方、インタビューの依頼状と同時に送付したアンケートに関しては、一定数量が返送されてきており、そのデータの入力は25年度中にすべて終了し、分析の段階に入ることができた。現時点では単純集計と、相関分析を御超えることができたが、その他の手法を用いてより詳細な分析を26年度に行うことにする。 起業者へのアンケート調査やインタビューと並行して、起業支援機関からエフェクチュエーションロジックをどのように考えるかについて聞き取りを行っている。このインタビューも起業者から得られたデータと比較させながら、分析の手を加えて、本ロジックに関する支援機関の考え方をまとめてみることにする。 26年度の計画として、まずはこのアンケートの分析からエフェクチュエーションロジックが析出できるか否かを,分析に使うべき手法を適切に選び出した上で、検討を行うことにする。その結果を、これまでに明らかにされた既存の創業プロセスのロジックと比較することで、意味ある結論を導き出したい。これと並行して、上述したインタビュー内容のコーディングやチャンク化からエフェクチュエーションロジックを確認する。これらが終了後、日本国内で学会報告を行うことにする。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、アンケート調査のデータの分析を行うことが必要である。単純集計と相関分析以外の分析手法を使って、エフェクチュエーションロジックをアンケートから抽出する。 第二は、架空ケースから得られた意思決定に関する口頭データの分析である。この分析からも、エフェチュアルな要素が抽出できるかどうかを至急検討することが必要である。口頭データを収集中において、その回答からエフェクチュアルロジック要素を含んだ回答が出てきたことを複数回確認しており、全般としては本ロジックの存在が確認できるものと考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
第一に、起業者データのデジタル化、アンケートの発送、アンケート入力、口頭データのテキスト化に関して外部業者に依頼せずにできるだけ自力あるいは学生バイトで行った結果、人件費・謝金を大幅に節約できた。その分を文献等の購入に回すことと、国内起業者あるいは起業支援組織の訪問調査に回したが、節約分の方が多く次年度使用額が生じることとなった。 残された分に関しては、起業に関する研究会などに参加して、本研究内容と実際の起業例との対比のために使用する(旅費、研究会参加費)ことを考えている。
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