最終年度では、研究の目的である「日本の創業者も欧米の創業者と同様、エフェクチュアルアプローチを採用している」ということを検証するため実施した質問票調査・聞き取り調査のデータの分析を完成させた。データ分析から読みとれたことは、日本起業者はベテランになるほどおおむねエフェクチュアル的な傾向を強めていくということであり、欧米の創業者および創業実態とほぼ一致する結論が得られた。 ただし、二つの点が今後さらに分析を行わなければならない課題として浮かび上がってきた。第一に、産業によってベテラン起業者であってもエフェクチュアル的傾向に差があるということである。この差異は元々のエフェクチュアルアプローチでは見いだせないとされていた。今回の調査で差異が検出されたことに関して、調査方法をより精緻化し産業ごとに創業アプローチには差異があるを検証する必要がある。第二に、ベテラン起業者の定義の問題である。今回の調査では元々の理論での定義(創業後10年以上経過した者あるいは複数回の創業経験がある者)を使った。ただし、10年以上では対象者数がきわめて少なくなってしまうため7年以上とした。その結果、7年経過した創業者はエフェクチュアル的であるが、二回以上創業した者は合理的であるという結果になった。このような差異にに関しても、さらなる調査が必要であると考えている。
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