研究課題/領域番号 |
24530476
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
清水 勝彦 慶應義塾大学, その他の研究科, 教授 (50579935)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | クロスボーダーM&A / M&A / 日本企業の海外進出 |
研究概要 |
平成24年度は、本研究においてはまず、M&Aの意思決定に関して、関係者(M&Aを行った企業、コンサルタント、M&Aブローカー、投資銀行、会計事務所といったアドバイザー)に対するインデプスインタビューを行う予定を立てた。いくつかの企業とのインタビューを始めると近年日本企業においては海外、特にアジア進出に関連したM&Aが急増しているという現状及び問題意識が重要であることが分かった。この点を踏まえ、そうしたアジア進出、国際化というコンテクストでM&Aの意思決定を考えるということが重要であると認識された。 従って、本年度多くの時間を費やしたのは、そうしたコンテクスの深い理解、特に国際化、アジア進出に関して日本企業がどのような問題意識を持っており、実際に進出(独資の場合、合弁の場合、M&Aの場合など様々な形態がある)にあたって、うまくいっているかどうか、それはなぜかという点に関して国内において上場会社を中心に海外担当役員または責任者に対して20社以上、海外(シンガポール、台湾)においても4社のインタビューを行った。 この結果については、M&Aの視点からはまだ十分でないものの、1つの区切りとして論文にまとめシンガポールのINSEADで発表を行い、さらに2013年7月に行われる国際学会(The Association of Japanese Business Studies)でもアクセプトされ、発表をすることが確定している。また、M&Aに関する文献、学術論文の基本的なレビューも並行して行い、それはThe handbook of Mergers and Acquisitions (Oxford University Press)に掲載された論文にも反映されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既述の通り、本年度は主にM&Aの意思決定プロセスに関して実務家を中心とした定性的インタビューを行う予定であった。その点については、現段階では30%程度の達成であると考えている。その理由は、インタビューを進め始めた時点でより海外、特にアジア進出に関して日本企業が多くの問題意識を持っており、M&Aに関してもそうしたコンテクストを十分理解した上で取り組む必要があることが明確になったため、拙速にM&Aにフォーカスする前にコンテクストについてのインタビューに重点を置いた。従って、本年度はM&Aのプロセスそのものというより、その背景となる海外進出および海外においての事業展開について、日本企業がどのような問題に直面しており、そうした問題に対してどのような施策を取っているかという点の理解について大半を費やした。国内においては20社を超える相当数のインタビューができたものの、実際に海外のオペレーションを担当している部門についてはスケジュールの問題等で4社に関してのみであり、より多くの深い十分なインタビューがまだできていない。また、M&Aの意思決定という点においては、十分なインタビューをする時間を取ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
25年度については、本来24年度の成果をもとに定量分析(サーベー調査)を行う予定であったが、より国際化の現実を理解した上での分析を行う必要が認識された。従って、25年度まず行わなくてはならないことは(1)日本企業の海外オペレーションの立場からの海外進出およびM&Aの現状、課題をより明確にし(2)同時に、海外企業(特に欧米企業)が日本企業に比べどのような取り組みをしており、その業績を比べることでより日本企業の課題についての理解を深め(3)そのうえでM&Aの意思決定の現状と課題を明確にすることであると思われる。 (1)については現地法人及び海外子会社へのインタビューが必要になると思われ、(2)については、それに加え海外企業の調査及び学会での情報収集が重要である。(3)については、国内でインタビューを進める必要がある。従って、25年度は7月(The Association of Japanese Business Studies、Association of International Business)、8月(Academy of Management)に行われる国際学会に積極的に参加するとともに、海外出張も取り入れ、3年目にしっかりとした論文を完成できる情報を収集する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の活動は主に国内で費やされたが、25年度は海外インタビュー及び海外での国際学会への出席を大幅に増やし、日本の国際化というコンテクストを踏まえたM&Aの意思決定のプロセスを検討したい。従って、25年度にもともと予定していた海外出張旅費に加え24年度の残額を使って、こうした情報収集活動を積極的に行いこれに対する支出を1,200(千円)程度予定している。国内出張もしっかりと行いたいと考えており、200(千円)の予定をしている。こうした情報収集は25年度においてもある程度論文の形にし、次年度(26年度)に開かれる国際学会に投稿、発表の予定であり、引き続き国際学会関係の旅費が発生する。 書籍及びデータについては引き続き収集する必要があり、スコープが海外を含めてということもあり海外の書籍やデータを購入する必要もあると考えられる。経費としては200(千円)程度を予定したい。 その他データ分析等に関しては、インタビュー及び情報収集の経過によるところも多いが、当初の予定よりは少なくなる可能性が高い。現段階では、300(千円)程度を計画している。予定より少なくなった分については26年度に繰り越し、ここでより深い分析を行うための費用としたい。
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