研究課題/領域番号 |
24530479
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
潜道 文子 拓殖大学, 商学部, 教授 (60277754)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ソーシャル・エンタープライズ |
研究概要 |
平成24年度は、海外での学会大会やシンポジウムにて日本のソーシャル・エンタープライズ(以下、SE)の特徴や成功要因に関する研究成果の報告や論文執筆を行った。日本のNPOの課題として指摘される活動資金の確保の困難という実態から考えて、SEの要件の中でも事業性に関しては日本のSEは大きな課題を抱えていると予想していたが、アンケート調査結果からは、1億円以上の売上のSEが多いことが分かった。また、海外の研究者からのコメントや意見は、日本におけるSEへの視点や評価とは異なる面も多かった。 さらに、シンガポールおよび韓国のSEおよび社会起業家を訪問し、インタビュー調査を行った。日本と同様、若い世代ではSEや社会起業家の活動に興味をもつ人々が多く、彼らの世代を中心に様々な新しいソーシャル・イノベーションが行われている。しかし、日本とは社会的課題の種類が多少異なり、それは政府の政策や社会保障制度等の違い等が起因しているようである。また、シンガポールのSEの活動を牽引する政府の役割は大きく、資金的支援や中間組織の支援なども政府に依存する割合が大きい。 日本のSEへのインタビュー調査は、イノベーションが起こる要因を中心に行った。北海道での調査では、以前行った沖縄の事例と同様に、地元以外の出身者による起業やSEで働く人々が客観的な視点で地域の様々な資源を評価し、それらをつなげて価値を創造している例がみられた。また、今後、継続的にひとつのSEの発展を観察し、その発展のプロセスを明らかにしたい。 海外では、中国でもNPOやNGOの活動が注目され始めているが、それらの組織ではいくつかの組織が合同でソーシャル・イノベーションを行うことによってより大きなインパクトを社会に創造していくという手法がある。このような試みは、英国のSEでも行われているが、日本のSEもこれらの事例から学ぶ点があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンケート調査結果の分析や文献研究を通じ、ソーシャル・エンタープライズ(以下、SE)の成功要因等について検討した。その成果を学会やシンポジウムでの報告、および論文執筆等を通じて計画通り発表を行った。 また、海外ではシンガポールおよび韓国、国内では神戸および北海道におけるSEや社会起業家に対してインタビュー調査を実施した。SEにおける経営戦略やビジネスモデル、組織の発展プロセスについての考察を行うことについても計画通り行うことができた。今後、より多くの組織の事例研究を通じて研究を進めたい。また、ひとつの組織の発展プロセスをある程度の期間、継続的に観察することも必要であると考えられるため、24年度に調査を行った組織や社会起業家について、引き続き、調査を行っていきたい。 さらに、平成24年度は、計画通り、SEやソーシャル・イノベーション関連のセミナー、国際会議等へいくつか参加することができた。平成25年度は、より多くの情報収集のため、様々なセミナー等へ参加したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、引き続き、国内のSEを訪問し経営戦略やビジネスモデルについての調査を行う。また、その結果を類型化し整理する。さらに、組織の発展プロセスについて考察を行う。これまでに調査を行った組織のその後の発展状況についてもヒアリングを実施し、発展プロセスについて考察を行う。 第2に、地域の力と起業家と地域との関係性、ソーシャル・キャピタル、ネットワーク理論、クラスター理論等に関する文献のレビューを行う。 第3に、欧州のSEの特徴について文献を通して研究する。 第4に、連携研究者との研究会を実施する。連携研究者の専門からのSEに対する考察や視点を参考にして、新たな研究のいとぐちを探求する。 第5に、欧州のSEや中間支援組織へのインタビュー調査を行う。欧州のSEはその組織形態も様々であるが、例えば、英国では、2004年より、CIC(Community Interest Company)」が発足した。これは、政府の補助金以外に独自で活動資金を確保できるよう利益や資産を公共の利益のために使用する新しいタイプの会社である。このようなSEが抱える課題を解決し、活動しやすい組織形態を新たに作ったり、規制緩和を行ったりする状況を視察し、その背景について考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、国内のSEや社会起業家への調査をある程度行ったが、25年度は、より多くの調査を実施したいと考えている。現在の計画では、地方の過疎地域をはじめとする課題を抱える地域での先進的なSEの活動を調査し、論文や学会報告等で報告することによって、同様の課題を抱える地域への今後の地域活性化の一助となるような研究を行いたいと考えている。 また、SEやソーシャル・イノベーション関係の国内外のセミナーや会議などへも積極的に参加することを計画している。
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