研究課題/領域番号 |
24530479
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
潜道 文子 拓殖大学, 商学部, 教授 (60277754)
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キーワード | ソーシャル・エンタープライズ / 社会起業家 / 社会的起業家精神 / CSR / フロー体験 / サスティナビリティ / スポーツ / 公益と私益 |
研究概要 |
第1に、2011年に実施したアンケート調査結果を分析し、ソーシャル・エンタープライズ(SE)の生み出す価値、特に、そこで働く人々に対する価値を、M. チクセントミハイ(Csikszentmihalyi, M.)のフロー理論を中心に分析した。結果としては、前職のある社会起業家について、前職と現在のSEでの仕事との間には、仕事の楽しさや成長感等、仕事に対する誇りのようなフローの特徴を表す要因(内発的報酬)の程度に違いがあり、後者の方が程度が大きいと推測されることが示された。 第2に、SEを率いる社会起業家の有する社会的起業家精神について研究を行った。社会的起業家精神は企業の私益と社会の価値としての公益を結びつける役割を果たし、企業はこの社会的起業家精神によって、これまで気づかなかった社会の価値に繋がるニーズを見出すことが可能となり、企業の事業開発に発展することも考えられる。したがって、一般の営利企業は、CSR経営によって社会問題解決型CSRを実践する際に、SEの社会的起業家精神から学ぶことは多いといえる。 第3に、Jリーグは現在では、J1、J2、J3というリーグが存在しているが、大企業の支援を受けているケースの多いJ1のクラブチームと異なり、近年、リーグに所属したクラブの多いJ2、J3に所属するクラブは、地域の企業が支援しているケースが多くなってきている。そこで、このようなチームにおいては、クラブの運営方針も、地域の社会的課題解決との繋がりをもち、また、クラブの経営者もサッカーによってそのような課題解決を目指すような社会的起業家精神をもつ人々が多いのではないかと考え、インタビュー調査等を通じてその仮説の検証を行なっている。 第4に、近年、米国などを中心に、経営学教育にサスティナビリティや社会的責任の視点を取り入れる傾向がみられ、その実態と意義について研究を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013度は、アンケート調査結果の分析や文献レビュー、国内でのインタビュー調査などを中心に研究を進めた。しかし、予定したソーシャル・エンタープライズやその支援を行っている中間支援組織へのインタビュー調査、ならびに、地域の調査などは、充分になれなかった部分もあるため、2014年度は、引き続き、インタビュー調査を続けたいと考えている。 また、海外のSEの調査については、2013年度は、ミャンマーでの調査を実施したが、他にも予定していた地域や国への調査で実施できなかった面ががあったので、2014年度は、さらに海外での調査も進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、さらに、国内の社会起業家へのインタビュー調査を進め、組織としての成長のプロセスと成功要因を分析する。 また、海外の社会起業家やソーシャル・エンタープライズへのインタビュー調査も実施し、日本の状況との比較も行いたい。 さらに、2013年度に開始した地域に根差したサッカークラブとその運営を担当するGM(general manager)をはじめとする経営者の社会的起業家精神についてもさらに、インタビュー調査を重ねて、日本における新しいプロサッカークラブのビジネスモデルとその生み出す価値について研究を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は、国内外のインタビュー調査が予定通り進まなかった面があり、また、その結果の集計や資料整理等で使用する予定だった人件費等も残額が生じた。 2014年度は、国内、海外のインタビュー調査をさらに進め、また、ソーシャル・エンタープライズやイノベーション関係のセミナーや会議等にもより積極的に参加する予定である。
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