2016年度は、日本の社会起業家やソーシャル・エンタープライズ(SE)へのインタビュー調査を中心に、起業家の資質、組織の経営資源、他組織との協働関係等の視点からその成功要因についての研究を行った。また、それらSEが活動を行う地域社会の特徴や地域社会の文化や伝統、資源、行政の政策などの要因がSEの活動に与える影響について考察を行った。さらに、それらの成果を踏まえて、昨年度、国際学会(Euram)で報告を行った、日本のSEに内在すると考えられる、日本の伝統的ビジネスに組み込まれている倫理性と、連携研究者の櫻井秀子氏の専門であるイスラーム型ビジネスにおける倫理性との共通性、および欧米型ビジネスと比較した際の優位性の観点からの研究を櫻井氏と共著で著書にまとめた。 また、SEの成功の要因を、社会起業家や共に働く人々の間に創造される、仕事という活動そのものの「楽しさ」の視点(フロー体験)から分析し、国際学会(Euram)で報告を行った。本研究では、社会起業家たちが、彼らの前職での状況に比べて、SEにおける仕事においてフローの特徴をより多く得ており、仕事におけるより多くの「楽しさ」や「フロー」を体験していることが明らかとなった。加えて、イノベーションや経済的業績とフローとの関係についても考察を行った。 さらに、本研究は、SE型のビジネスの潮流は日本だけでなく世界的なものとなっていることや、特に、優れた若者たちが社会起業家を目指すことも多くなっている現状へのひとつの解を示そうとするものでもある。
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