後発企業効果(後発企業がトップ企業をキャッチアップし逆転)の可能性のある約120 の市場をピックアップし、一次資料に遡って直近データを補いつつマーケットシェアのグラフを作成し直した。そして、後発企業効果が確認された63市場に関してマクロ定量分析を施し、業種別分布、市場参入の年代別分布、逆転の年代別分布、逆転に要した年数、停滞期を除くキャッチアップ年数について検討を加え、以下の事実を発見した。 業種別には製薬13を筆頭に家電、食品8の3業種が特に多く、化粧品・トイレタリー6、精密・情報機器5が続く。市場参入で最も多いのが1950年代までの13社で、高度経済成長期に当たる60年代の市場参入は少ない。後発企業効果が最も多いのが2000-04年20社と1995-99年16社の「失われた10年」期といった制約条件の到来期である。 一方、トップ逆転までの期間は5年以下の14社と31年以上の13社が最も多い両極化傾向にあるものの、両社の違いは停滞期の長さによるものである。したがって、停滞期を除くと5年以下30社、6-10年25社と10年以下の短期パターンが実に85.9%を占める。 そして、後発企業効果を発揮するためには、後発企業特有の技術力、経営資源(技術者、販路、資金)、消費者、ブランドの4つの壁の克服が不可欠であり、社内にある経営資源を活用できるタイプの後発企業は短いキャッチアップを可能としている。 今後、本格的な事例研究へと移行するが、後発企業にトップ逆転をもたらした革新的企業者活動とその戦略的意思決定プロセス、具体的には、後発性のメリットを内部化し、後発性のデメリットを克服していくプロセスが重要となる。と同時に、こうしたトップ逆転が当該市場の企業間競争を活性化させ、さらなる市場の拡大を可能としているかどうかが、後発企業効果研究のポイントとなっていく。
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