研究課題/領域番号 |
24530484
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
臼井 哲也 日本大学, 法学部, 准教授 (60409422)
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研究分担者 |
滝本 優枝(金井優枝) 大阪経済法科大学, 経済学部, 准教授 (30330351)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 価値実現 / 企業特殊優位 / ダイナミック・ケイパビリティ / 国際情報交換 アメリカ |
研究概要 |
なぜ企業は本国の経営資源を梃子として,進出先国市場において価値創造をできるのだろうか,あるいはできないのだろうか。既存研究では,本国で開発した企業特殊優位が進出先国市場において直ちに価値を発現することを仮定してきた。しかし近年の研究成果は,企業特殊優位による現地市場での価値創造には試行錯誤のプロセスが内在していることを示している。本研究の目的は,企業特殊優位による価値創造のプロセスマネジメントに関して,ダイナミック・ケイパビリティ(DC)論に基づき明らかにすることにある。これは現地市場での価値創造を射程とした多国籍企業論の再構築の一歩と位置付けられる。 本年度の成果は主に3つに分類できる。第一に,再度の文献レビューによる分析視角の精緻化である。DC論に加え,戦略経営論のTallman(1991, 1992)とHunt & Morgan(1996)やDay & Wensley(1998)などの戦略的マーケティング研究の流れを統合する方法で,分析視角を精緻化した。第二に,この分析視角に基づく論文を執筆,投稿した。ひとつはアパレル企業の海外進出に関する論稿で,欧州国際ビジネス学会(EIBA)の年次大会において報告した。本テーマでは合計で4つの学会,ワークショップで報告機会を得ることにより,批判に耐えうる分析視角の開発に努めた。もう一本は新興国市場戦略に関連する共同論文であり,国内の学会誌(国際ビジネス研究)に採択された。第三に,本分析視角を中小企業の海外進出のコンテクストに適合させ,探索的なケース分析を行った。いずれも次年度以降の実証研究の基礎固めとして,初年度に実施すべき研究活動であった。特筆すべき発見事項は,企業特殊優位の価値と希少性は現地市場に固有であり,DC論が指摘するように,これら既存資源と新規資源の柔軟な組換えが,現地の経営成果に大きな影響を与えるという命題開発にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は比較ケース分析を用いて,分析フレームを開発することを目的としている。そこで初年度においては,①これまで収集してきた多国籍企業のケース(5本)と②新たに収集したケース(10本)を総合的に分析し,かつ複数の国内外の学会,ワークショップ等の研究報告を踏まえて,分析フレームを開発している。このように大規模な実証調査に入る前に,予備的な調査を繰り返して命題を精緻化しておくことが重要である。よって本年度の研究はおおむね順調に進展していると自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に開発した分析フレームに基づく実証研究に入る。以下の手順で進める。 ①操作化,測定具の開発 ②ケースの収集(30社) ③論文の執筆と海外学会での報告 ①においては初年度に収集,分析したケースに基づき,質問票(インタビューにおける質問)を開発する。つまりどのような質問と回答によって何が測定できるのかという問題を既存研究の構成概念と照らし合わせながら開発していく。次に,②についてはすでにサンプル企業の選定に入っている。専門家への業務委託と協働により,より効率的,効果的にデータ収集(インタビュー)を計画,実行する。現状では6月~12月の期間に約30社への訪問を計画している。③はこれまで通り,データが集まり次第,コンカレントに分析し,論文へ仕上げていく。もちろん完成版とはならないが,プロトタイプ執筆→国内外の学会で報告,投稿→修正のサイクルを回すことにより完成へと近づけていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
以下のように研究費の使用を計画している。基本的にはデータ収集・分析→報告・投稿→修正のサイクルを回すために,研究費を活用する。 ①専門家への業務委託費・・・60万円 ②海外学会での報告(2回)・・50万円 ③論文執筆経費(英文添削など)・・20万円 ①については,研究開始前は3年で70社のケース収集・分析を研究者一人で実行することを予定していたが,実際に取り掛かってみるとサンプル企業リスト作成,アポ取り,日程調整,報告書作成などの一連の業務に膨大な時間が必要であることが判明した。そこでアポ取りと日程調整などの比較的単純な作業については外部へ委託し,研究効率をあげることを目指す。加えて研究分担者にもケースの収集を分業する。この体制が確立すれば,3年で70社の目標は達成できる。
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