研究実績の概要 |
本研究の目的は,多国籍企業が既存の経営資源が生み出す製品・サービスを活用して新興国市場において価値を実現する(value achieving)論理を解き明かすことにある。これまで多国籍企業論は,進出企業が現地企業との競争において常に劣位な立場におかれることを跳ね除けるだけの優位性を備えているという前提をおいてきた。企業特殊優位(所有優位,以下,FSA)である。優位性は,企業規模,先端技術,資本,広い意味での知識などとされ,それらFSA(s)は,所有による支配を通じて常に現地市場において自動的に価値を創造することを前提としてきた。しかし我々のケースデータは,本国資源による現地市場での価値実現における試行錯誤プロセスの内在を示唆するものであった。 本研究では,平成24年度と25年度において複数の探索的なケース分析を用いて,本国資源の(非立地特殊的な)FSA化のプロセスを分析し,リソース・リポジショニング・フレーム(以下,RRF)を開発した。そして最終年度では,ケースを積み増し,合計で42社のケースデータを用いて実証を試みた。その成果は国際ビジネス研究学会第21回全国大会の統一論題にて報告し,学会誌への招聘投稿を準備している(平成27年10月ごろ発行予定)。この招聘論文を本研究の成果として位置付ける。
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