本年度は、昨年度に引き続き、①㈱アイアールシー発行の『主要自動車部品の生産流通調査』84年版~08年版(3年ごと)のデータを用いて、自動車メーカー・部品サプライヤー間の部品レベルでの取引関係(「モノの取引関係」)について、また②1983年から2009年までに自動車メーカーが出願した全ての特許データと、その間に自動車部品メーカーが自動車メーカーと共同で出願した全ての共同特許データ、ならびに1990年から2009年までに自動車部品メーカーが出願した特許数のデータを用いて、自動車メーカー・部品サプライヤー間の先端技術分野での取引関係(「知の連携」)について、それぞれ定量化した上で、両者のネットワーク構造のあり方が事業成果や企業成長に及ぼす影響について、生存時間解析の手法を用いて定量的に検証した。その結果、部品特性や多角化度、海外売上高比率など、他のさまざまな要因をコントロールした上で、(1)主要顧客である自動車メーカーから見た重要度が増すと、それだけ当該サプライヤーの取引継続期間は延びる傾向が見られ、(2)幅広い自動車メーカーとの取引関係を築くことによって、それだけ当該サプライヤーの取引継続期間は延びる傾向が見られ、(3)主要顧客である自動車メーカーから見た重要度が増し、なおかつ幅広い自動車メーカーとの取引関係を築くことによって、その分だけさらに、当該サプライヤーの取引継続期間は延びる傾向が見られる、ことが明らかになった。つまり、「知の連携」と「モノの取引関係」のネットワーク構造のあり方は、事業成果に影響を及ぼすのであることが明らかになったのである。 こうした成果は、2015年4月末現在で論文作成中であり、まずは法政大学イノベーション・マネジメント研究センター ワーキングペーパーシリーズで公表し、後には学術誌に投稿し公表する予定である。
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