研究課題
上半期については、昨年同様の調査主体にアクセスし、ヒアリング調査を継続した。とりわけ、大阪市が支援するクリエイティブクラスターの形成に関して、広告制作クラスターと製造業、行政との連携における事業創造のプロセスを中心に調査を展開した。期間中に、新たに16件の質的調査に関するデータを加えることができた。下半期は、海外での学会報告のエントリーがリジェクトされたために、クリエイティブ産業における協業関係にフォーカスした研究の方向性を改め、クラスターにおける協業関係の発展という観点から、これまでの研究成果を取りまとめることになった。成果の提出については今後も海外における成果報告の機会を探るために英語での執筆作業となり、法政大学イノベーションマネジメント研究センターのワーキングペーパーとして年度内に提出を完了した。本研究では、協働の概念として、クラスターマネジャーとクラスター企業家という新たなカテゴリーにおける関係性の変化が明らかにされた。それによると、クラスターの発展は、政策と現場をつなぐクラスターマネジャーだけではなく、直接的に協業関係にあるクラスター企業家の巻き込み能力の差が大きいことが明らかになった。この研究成果は、協働におけるクリエイティビティが顧客志向の2者間関係から多主体との探索的な学習関係へと変異することによって、産業クラスターが発展していくプロセスを表しているのではないかという示唆が同時に得られており、これらは次の研究課題として、新たな研究プロジェクトに引き継がれる予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件)
Working Paper Series of The Research Institute for Innovation Management, HOSEI UNIVERSITY
巻: 171 ページ: 1-23
http://riim.ws.hosei.ac.jp/wp-content/uploads/2016/03/WPNo.171_Inagaki.pdf