研究課題/領域番号 |
24530494
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小林 英夫 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 教授 (80052546)
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研究分担者 |
金 英善 早稲田大学, 付置研究所, 次席研究員 (40611067)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
2012年度は、調査初年度として韓国、日本企業の中国展開の一環として韓国の現代自動車の開発・研究機関としての南陽研究所を訪問することと、中国北京地区の韓国現代企業の部品企業活動を調査すること、そして天津地区のトヨタ系日本企業の活動実態を調査すること、そして上海地区の部品企業の実態を調査することであった。 韓国の南陽研究所の調査では、韓国側の好意によって、まず全体的説明のあと研究所のテストコースの試乗やその周辺に位置する各研究棟の機能と活動の説明を受けたあと、展示館で現代自動車の研究開発の歴史を見ることができた。研究所の開発人員は約1万名で、毎日ソウル駅から100台近いバスで送迎されるというのが、当研究所の日常的な姿ということであった。そして、南陽研究所が、現代自動車の有する他の2つの研究所<商業車研究所・環境研究所>を統括する基軸的研究所であることを知った。また、この研究所が有するテスト・コースが70キロでアジアでは中国のVWが有する中国でのテストコースに次ぐ大きさであることを知った。中国の北京地区のサプライヤーとしては、海納川、京西重工などを訪問した。同企業は、現代自動車が合弁を組む北京汽車への部品納入を中心とする会社だが、中韓合弁企業のなかにあって、韓国側の現代MOBISとある面で競合し、ある面では共同する面が見えて興味深かった。また、中国のトラックメーカーのFUTONを訪問し、その営業実態を調査した。また、天津地区では天津トヨタ、天津アイシン、天津矢崎を訪問し、各企業の活動実態と3.11以降の生産の回復状況の調査を行った。上海地区では、主に常熟のトヨタの実験施設の建設状況を見学した。いまだに建設途上ではあるが、これが将来のトヨタの中国戦略の中心的核となると聞かされた。 来年度に向けた更なる調査の基礎固めができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回は、第一年度の目標として、韓国本社訪問、天津地区の日系企業訪問、北京地区の韓国・中国企業訪問、江蘇省自動車部品産業調査という課題に対して、最後の江蘇省調査がトヨタの常熟調査を除くと十分出なかった点を除けば、おおむね順調であった。とりわけ、これまで調査されることが少なかった現代自動車の南陽研究所を訪問し、それを調査できたというのは、今年度の最大の成果であったといえよう。また、北京現代の基軸的サプライヤーのひとつである海納川を調査できたというもの大きな成果であった。また、天津地区での日系企業の3・11以降における災害度の快復調査ができたというのも今期の大きな成果の一つであった。こうした意味で、第一年度はそれなりに当初の課題を達成できたと考えている。もし、江蘇省における中国企業の実態調査がなされていたとすれば、完璧であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度の韓国での現代自動車のサプライチェーン追加調査及び中国での予備調査を踏まえた中国での日韓両国企業の主要拠点でのサプライチェーン調査を実施する。具体的には第一年度の韓国の追加調査及び予備調査地域であった北京、天津、広州、塩城でのカーメーカーとTier1企業のサプライチェーンの実態、とりわけ市場適応型製品開発の現地での日韓比較を検討する。その際には、応用開発能力のどの部分が中国の開発部局に降りているのかを検討の主眼とする。また、中国政府の強い要請の下で日韓両国企業が進めている現地ブランド車―たとえば日産が東風と共同開発で進めている「啓振」やホンダが広州汽車と進めている「理念」、さらにはトヨタが同じく広州汽車と進めている新車種が、日系部品メーカーのサプライチェーンにいかなる変化を与えているのか、いないのか、同じ問題で韓国の現代自動車の現地ブランド車は、韓国のサプライチェーンにいかなる影響を与えているのかを検証する。さらに第二年度では、来るべき第三年度に備えた中国での日系、韓国系Tier2企業の予備調査を実施する。地域はTier1企業地域と重なる北京、天津、広州、塩城地域が中心であるため、Tier1企業と時期を同じくして、付属作業として、同時並行的に実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度は、本研究の最終年度として、中国地域での日系、韓国系Tier2企業の集中的実態調査を実施する。調査方法としては、韓国企業に関しては、韓国から進出した経緯やその後の部品取引を含むTier1企業との関連が重視されるが、全体的にはTier1企業調査の際の手法と大きく異なるところはない。問題は日系企業の調査である。これまでの調査経験から割り出した推論によれば、中国に進出した日系Tier2企業の数は、すこぶる少なく、かつTier1企業との関連が密接で、これまでいうところの「系列」関連が濃厚である。その点で、独立性が強い韓国系Tier2企業とは著しい対照をなす場合が多い。また、2008年以降の特徴として、Tier1企業のTier2化といった従来の日系企業のサプライチェーンは、急速に変わり始めており、むしろ中国のローカル優良企業の買収と育成という戦略に代わり始めているというのが一般的に見られ始めている現象である。なぜなら従来のTier1企業のTier2化では、高品質は確保できるが、同時に高価格を招来し、現地欧米韓企業との競争に打ち勝つことができないからである。したがって、キー部品に関しては日本からのTier2企業の進出を待つが、それ以外の周辺部品に関しては、むしろ積極的に現地ローカル日本企業をTier2企業として活用するという戦略が広がりつつあると想定される。本研究では、そうした日系Tier2企業活用法の変化と多様化に着目して、その実態を検討することとしたい。
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