研究課題/領域番号 |
24530495
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
谷口 真美 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (80289256)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ダイバーシティ / リーダーシップ / 組織成果 / グローバル経営 / 人材の多様性 / 人的資源管理 / 人材開発 / ポジティブアクション |
研究概要 |
国内における少子高齢化、事業環境のグローバル化により、国内外の多様な人材をいかすことが企業経営にとり、ますます重要になってきている。 しかしながら、多様性をいかしてビジネス成果を向上させているリーダーは、先進企業においても、まだ僅かであり、その他多くの管理職は、多様性をいかすことの重要性は理解しても、自ら多様な人材をいかす行動実践に結びついていない。そこで、本年度はとくに、「多様性をいかしビジネス成果を向上させる実践行動の解明」を試みた。 その結果、次のようなことが明らかになった。1)リーダーが担う役割・機能は、①国境を越え、本国人だけでなく外国人の同時マネジメントを行うリーダーが増えてきている。②直接の部下や社内の関係者のみならず、海外販売会社・生産子会社などの状況を把握し動かせないと職務遂行が難しくなっている。2)リーダーの主要な行動実践は、①変化を先読みする:これは、担当組織・担当製品・サービスの先行きが不透明な中で意思決定を行う際に、環境変化を先読みし、将来に向けた仮説を打ち立て、必要な時には機敏に変容させ、組織を明確に方向づけていく。②変化を取り込んで動く:絶えず起こる変化を取り込みながら、必要とあれば迅速に組織の舵を切り、不確実性の中での力強く組織を動かしていく。③組織に変化を生み出す:人材の持つ異質性を引き出し、組織の多様性をいかして組織成果と組織・個人の成長を増幅させていく。④柔軟に変化しつづける:自己認識と経験の一般化と更新の重要性を意識しながら、リーダーが自らの経験や価値観の範囲外の事柄をフラットに受け止め、自ら学習や変革を起こしていく。 今年度実施した調査により、リーダーに期待される役割・機能と変化を示し、外部環境の複雑性・多様性の高まりに対処する4つの活動を示唆したことは、多様性をいかしてビジネス成果を向上させるプロセスの明確化にとって重要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多様性をいかすリーダーの育成・開発プロセスを明らかにするため、科学研究費の交付期間内に次の3つの調査を行う予定である。 1)多様性をいかす上での強み・弱みの自己認識と、多様性をいかす実践行動との関係性の解明。 2)多様性をいかすリーダーの要件の各項目が、開発されるプロセスの解明。 3)個人レベルの意識と集団レベルの意識(職場風土)との関係性の解明。 初年度は、1)を中心に調査を行った。調査は、ほぼ予定通りのスケジュールで進行している。調査対象も、ほぼ予定通りの適任者を選抜することができ、期待通りの発見事実を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
多様性をいかすリーダーの育成・開発プロセスを明らかにするため、交付期間全体を通して、次の3つの調査を行う予定である。1)多様性をいかす上での強み・弱みの自己認識と、多様性をいかす実践行動との関係性の解明。2)多様性をいかすリーダーの要件の各項目が、開発されるプロセスの解明。3)個人レベルの意識と集団レベルの意識(職場風土)との関係性の解明。 調査方法としては、既存研究のサーベイおよび国内外の研究者との意見交換により、1)から3)の理論モデルやフレームワークを明確にする。次に、実証調査として、1)と2)は、企業横断的なヒアリング調査、3)は、一企業に対するアンケート調査を中心にして実施している。研究上の課題の1つは、1)と2)のヒアリング調査と、3)のアンケート調査の対象が、同一企業での実施協力が得られにくいことである。そこで、3)のアンケート調査実施企業については、リーダー本人へのヒアリングが実施できない場合には、人事担当者やリーダーの行動を日常的に観察している社内の人材に聞き取りを行い、補完的な調査としたい。研究上の課題の2つ目は、うまくいっている部署とうまくいっていない部署との比較を行う際に、後者の調査協力が一時的に得られないことにある。その際には、様々なパフォーマンス基準を設定し、別の基準でみるとうまくいっている部署だと判断できること、ダイバシティをいかすことは手段であり目的ではないことを説明し、協力を促す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度も引き続き、多様な人材をいかすリーダーの行動実践とその開発プロセスを、次の4つの方法により解明する。 1)既存の調査研究のサーベイ(既存研究からの仮説構築・欧米の先進事例と調査結果の収集) 2)多様な人材をいかすリーダーの行動実践と開発プロセスに関する調査、企業横断的ヒアリング調査:①自己認識と行動実践との関係性の解明、②個人レベルのダイバシティ志向(マインドセット)と集団レベルのダイバシティ志向(組織風土)との関係性の解明、③多様性をいかすリーダーシップの要件毎の開発プロセス探索。 3)多様な人材をいかすリーダーの行動実践と開発、企業横断的ヒアリング調査:①企業の人事担当者へのヒアリング調査、②職場のパフォーマンスに結びつくプロセスの解明:管理職・直属上司・部下ヒアリング調査。人事担当者ヒアリングをもとに選定した職場の管理職・直属の上司・部下に対して、多様性をいかすリーダーの要件の充足・自己認識・行動実践・職場のパフォーマンスとのかかわりについて聞き取りを行う。各社のベストプラクティスを作成する。③多様性をいかすリーダーの開発プロセス探索:管理職ヒアリング調査。行動レベルで多様性をいかすことができているリーダーを選定する。彼らのそうした行動のベースとなっている認知・態度的特性を身につけるきっかけとなった経験の共通項を特定し、既存研究から構築した仮説の検証を行う。 4)海外の研究者からの情報・資料収集:①欧米の調査機関および研究者との研究成果の交換・資料収集、②毎年2・3月に開催されるION(International Organization Network)および毎年8月に米国本土で開催される、アカデミー・オブ・マネジメント年次大会で、ジェンダー、ダイバシティ、チーム、異文化対応能力(CQ)、グローバルリーダーシップ研究者との意見交換を行う。
|