研究課題/領域番号 |
24530495
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
谷口 真美 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (80289256)
|
キーワード | 人材の多様性 / リーダーシップ / 女性 / 外国人 / ダイバーシティ / リーダー開発 / 複雑性 / グローバル化 |
研究概要 |
国内における少子高齢化、事業環境のグローバル化により、国内外の多様な人材をいかすことが企業経営にとり、ますます重要になってきている。 しかしながら、多様性をいかしてビジネス成果を向上させているリーダーは、先進企業においても、まだ僅かであり、その他多くの管理職は、多様性をいかすことの重要性は理解しても、自ら多様な人材をいかす行動実践に結びついていない。そこで、本年度は引き続き、「多様性をいかしビジネス成果を向上させる実践行動の解明」を試みた。 まず、リーダーの実践行動を明らかにするうえで、置かれている環境の特性を検討した。ますます複雑化する環境の特性の中でも、多くのミドルが、「因果のわかりにくさ」、「相互依存関係」、「予測困難性」といった複雑性の次元に直面していることが明らかになった。それらは、「異業種・複数機能のマネジメント」、「部下や関係者の能力・専門性レベルのばらつき」、「課題レベルの高さ」が主な原因となっていた。 さらに、複雑性・多様性マネジメント経験のあるミドルの意思決定場面における対処から、以下の3つの特徴が抽出された。①意図・背景も含めて,自分の意見を明確に示して意思決定する②その場で効果的な対策を打ち出すだけでなく「次の手」も準備する③反応を予測した手を打っておく。とくに、複雑なマネジメント経験の有無での比較では,「意図・背景も明確にした意思決定」に有意な差が見られた。意図や背景を明確にしないと、タスクコンフリクトが発生しがちな「相互依存関係」にうまく対処できない。複雑で多様な組織のマネジメントを経験している人は,この重要性を認識し実践に移していることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多様性をいかすリーダーの育成・開発プロセスを明らかにするため、科学研究費の交付期間内に次の3つの調査を行う予定である。 1)多様性をいかす上での強み・弱みの自己認識と、多様性をいかす実践行動との関係性の解明。 2)多様性をいかすリーダーの要件の各項目が、開発されるプロセスの解明。 3)個人レベルの意識と集団レベルの意識(職場風土)との関係性の解明。 2年目は、2)を中心に調査を行った。調査は、ほぼ予定通りのスケジュールで進行している。調査対象のサンプルサイズが若干少ないものの、ほぼ予定通りの適任者を選抜することができ、期待通りの発見事実を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度も引き続き、多様な人材をいかすリーダーの行動実践とその開発プロセスを、次の4つの方法により解明し、調査全体のとりまとめを行う。 1)既存の調査研究のサーベイ(既存研究からの仮説構築・欧米の先進事例と調査結果の収集) 2)多様な人材をいかすリーダーの行動実践と開発プロセスに関する調査、企業横断的ヒアリング調査:①自己認識と行動実践との関係性の解明、②個人レベルのダイバシティ志向(マインドセット)と集団レベルのダイバシティ志向(組織風土)との関係性の解明、③多様性をいかすリーダーシップの要件毎の開発プロセス探索。 3)多様な人材をいかすリーダーの行動実践と開発、企業横断的ヒアリング調査:①企業の人事担当者へのヒアリング調査、②職場のパフォーマンスに結びつくプロセスの解明:管理職・直属上司・部下ヒアリング調査。人事担当者ヒアリングをもとに選定した職場の管理職・直属の上司・部下に対して、多様性をいかすリーダーの要件の充足・自己認識・行動実践・職場のパフォーマンスとのかかわりについて聞き取りを行う。各社のベストプラクティスを作成する。③多様性をいかすリーダーの開発プロセス探索:管理職ヒアリング調査。行動レベルで多様性をいかすことができているリーダーを選定する。彼らのそうした行動のベースとなっている認知・態度的特性を身につけるきっかけとなった経験の共通項を特定し、既存研究から構築した仮説の検証を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
海外ヒアリング調査を次年度に繰り越したため。 多様性をいかすリーダーとそのメンバーに対する海外ヒアリング調査を実施し、リーダーの行動実践と組織的な特徴について明らかにする。
|