研究概要 |
海外進出企業を受け入れている国の株式所有への制限の影響を分析するために、Orbisデータベースより2003-2009年に継続的に収録されているマレーシアとタイへ進出している日系企業各々609社と1,085社を分析対象とした。変数はROA,ROE等の収益性の4指標と支払能力比率、営業年数、従業員数である。所有制限についてはタイでは一般的な所有制限である一般型制限であり、マレーシアでは産業とプロジェクトによる制限である混合型制限である。マンウィトニーの検定では、所有制限が子会社の進出形態と収益性に統計的に有意な差をもたらしていることが指摘できた。また、重回帰分析により、親会社のROA,ROE,自己資本比率、営業年数は、マレーシアやタイでの子会社の収益性に負の影響を与えており、親会社の営業年数が半世紀以上であることも影響していると考えられる。 第2に、東洋経済新報社の海外進出企業CD-ROMのデータより、日本の多国籍企業の投資目的と子会社の収益性の関係を分析した。海外の生産ネットワークの構築、海外市場の獲得、海外の流通チャンネルの確保、情報の収集、安い労働力の確保がトップ5の投資目的である。東アジアにおける中国、東南アジアにおけるシンガポール、タイ、マレーシアに数多くの日本の多国籍企業が進出し, FTAの恩恵を受けている。2003年にはローカル市場の獲得が第1の投資目的であったが、2009年には海外生産ネットワークの構築が第1位と変化している。また、統計的な分析により、立地要因と投資目的は子会社の収益性に影響を及ぼしていることがわかった。 第3に、タイ、マレーシア、フィリピンと日本におけるICT産業での売上高成長率においては統計的に有意な差はないが、収益性においては日本企業が劣っていることが示せた。
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