研究課題/領域番号 |
24530502
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛知東邦大学 |
研究代表者 |
田村 豊 愛知東邦大学, 経営学部, 教授 (40340400)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 工場エンジニア / 職場の分業 / 製造技術 / 生産技術 / 管理ノウハウ / 標準作業 |
研究概要 |
本研究の課題は、工場で活動するエンジニアの行動特性と彼らが必要とする管理ノウハウを実証的に明らかにすることにある。そのために工場運営で欠かせない生産技術、製造技術エンジニアがどのような役割を果たしているのか、日本、スウェーデン、ドイツを比較する。比較の精度を上げるために調査では、標準作業管理と生産技術、製造技術などの職場の分業を軸において検討を進める。 今年度の調査は、パイロットリサーチを兼ねて、ドイツの商用車メーカーの工場で調査を実施した。調査工場は完成車、エンジン、キャブと担当製品が異なっていた。調査では工場内での組み付け作業についての知見と責任をもつエンジニアにインタビューを行い、工場組織の中での彼らの位置と役割、製造を直接担当する作業者との関係、他部署とのコラボレーションの状況、工場エンジニアのキャリアパスなどについて比較を試みた。調査は3工場、9人のエンジニアにインタビューを行った。また、ドイツでの調査と合わせて、日本国内では、愛知県にある部品メーカーでも同じく工場レベルのエンジニアを対象にヒアリング調査を実施した。 調査の結果から、ドイツのエンジニア職の職分は細かく分かれ、ライン組織と役割分担をしながら作業遂行管理が行われている。例えば、組み付け作業過程での作業の具体的遂行と作業者への人的管理は工場組織で機能的に分けられている。これに対して日本の工場では、作業過程での作業管理と人的管理は分化されず、作業集団単位が作業遂行と人的配置などで管理母体となっている。そのため、エンジニア職の職分はドイツに比べ日本工場はシンプルであり、エンジニア職の担当範囲も広く、かつ包括的であることが推測された。これら調査活動の成果公表については、2012年度の日本経営学会(日本大学商学部)、社会政策学会(駒澤大学)の全国大会で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題達成においては、調査、分析視角の見通しもぶれることなく、また調査実施に当たっても大きなトラブルもなく進んでおり、おおむね順調と評価している。初年度の調査課題であった分析視角の確定は、まず日本での工場調査を通じて確かめるよう努力してきた。今年度のドイツでの調査では調査箇所が3工場、それに商用車メーカーに限られたため、けっして十分とはいえない。国際比較を行う上で、調査対象の広がりは調査内容の客観性を高める上で不可欠となる項目であり、次年度は商用車メーカーから乗用車メーカーへと調査対象を広げる必要があろう。 海外調査と合わせ、調査の前提となる、先行研究についての理論的検討を進める必要がある。だが工場技術者に関する先行研究は実はけっして多くはない。検討時期、検討視角とも視点がバラバラであり、本研究の課題はその点で重要な研究上での挑戦となる。そこでこれまでの研究上での限界を乗り越えるためにも、日本工場をモデルとしながら、日本での調査を理論的検討と並行的に進めることで評価軸の確認を行い、分析の精度を向上させることが求められよう。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究としては、ドイツでの工場調査を進めたい。とくに乗用車メーカーでの工場調査を行い、今年度調査実施した商用車と合わせて、ドイツの概観を掴むことを第一の課題とする。そしてスウェーデンの調査に着手する。スウェーデンでもドイツと同じく、商用車、乗用車両領域での調査を行う予定している。とくにスウェーデンでは日本企業で行われている生産管理手法の導入が積極的に進められており、生産、製造面でエンジニアがどのような行動特性を示すのか、ドイツとの違いにも注目する調査が必要である。 さらに上記の海外での調査と合わせて、日本での完成車、部品メーカーでの調査を鋭意進めることで、評価軸となる日本モデルの解明と確定を行う必要があろう。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用とされる項目としては、まずドイツでの調査とスウェーデンの調査、さらに日本国内での調査が計画される。概算でそれぞれ40万円程度での海外調査を予定し(合わせ2回)、国内調査はほぼ10万円程度が想定している。また、初年度十分にできなかった資料収集をすすめ、先行、周辺研究の進展状況を把握する必要がある。 また調査の成果については、検討が行われしだい国内の経営関係学会、およびフランスの自動車関係の研究団体であるGelpisa、また経営関係学会が統合されているIFSAMなどの海外学会での研究報告なども念頭において研究成果の整理を進めたい。そのためには若干の渡航費が発生することも予測されるが、これについては研究費の執行状況を勘案し、無理のない範囲で計画を行いたい。
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