研究課題
本研究は、工場で活動するエンジニアの行動特性と管理ノウハウがどのように組織的に運用されているのか、国際比較の視点から明らかにすることにある。そこで工場運営で欠かせない生産技術、製造技術エンジニアがどのような役割を果たしているのか、日本、スウェーデン、ドイツを比較することにあった。比較の精度を上げるために調査では、標準作業管理の管理過程を基礎にして、生産技術、製造技術の相互関係の相互関係に注目し、検討を進めてきた。2014年度は、2年間の研究成果を踏まえ、日本、ドイツ、スウェーデン3国の工場エンジニアでの行動比較をいっそう精緻なものとするために、補足調査を中心においた。同時に、研究成果の社会的還元を進めるために海外学会での報告を鋭意行った。工場調査では、まず日本の自動車部品工場、ドイツの研究機関ISF、ドイツを代表する金属機械労働組合であるIGメタル、そしてスウェーデンでの複数の商用車組み立て工場でのヒアリングを実施した。調査を通じ以下の点が明らかになった。①ヒアリングを行った各国工場では日本的な作業管理手法の導入が継続的に行われており、日本的な作業管理手法の広がりは、いっそう進んできている。②その結果、工場エンジニアの行動には担当領域に変化が見られるようになった。③担当領域の変化は、まず、エンジニアの活動領域がチームとの融合し、エンジニアが作業現場に接近し、製造に強いエンジニアになっていく。④複数の職種に分けられているエンジニア職の内部に生産エンジニアと製造エンジニアの区分が生まれる。⑤チームの役割とエンジニアの役割の新たな再編が生じさせ、組織的なノウハウ蓄積を可能としている。本研究から、日本的生産管理が導入された場合、生産管理と製造管理とチームでの3階層型への傾向を強める。日本企業の競争力の中核をなす「現場」の力は、こうした3階層管理に支えられていると推測される。
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