研究課題/領域番号 |
24530506
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
井上 寛康 大阪産業大学, 経営学部, 准教授 (60418499)
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研究分担者 |
齊藤 有希子 (梅野 有希子) 独立行政法人経済産業研究所, その他部局等, 研究員 (50543815)
中島 賢太郎 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60507698)
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キーワード | ネットワーク / イノベーション / インパクト / 集積 / 特許 |
研究概要 |
本研究では,イノベーションに関わる個人・組織・地域のそれぞれのネットワークが,相互に与える影響の分析とその成長モデルの検証を行う. 研究実績としては以下の2つが挙げられる.1つはアメリカと日本特許をもとに,発明者と会社レベルにおいて繰り返し起きる共同発明について調べた.これら繰り返し起きる共同発明とそのインパクトをどのようなモデルで記述することができるか,一般化線形混合モデルを用いて議論するとともに,発明者と会社が相互に関係しあいながらそれら関係性のネットワークが成長していく過程をモデル化した.前者においては,発明者レベルでは減衰していき,会社レベルでは日本では減衰,アメリカでは発達していくことがわかった.また後者においては,ネットワークの成長は会社内における関係の密が,会社間の関係も発達させることなどが複数のモデルの比較によって初めて明らかになった. 2つ目の実績として,発明者の住所を用いて会社の事業所の所在地を明らかにし,事業所間発明の分布や事業所そのものが地理的にどのように分布しているか,また分布に影響を与える要因は何かを明らかにした.発見として,日本の知的生産拠点は単なる事業所よりも有意に集積していること,より高いインパクトを出す知的生産拠点ほど集積していること,事業所間共同発明は集積していること,事業所間共同発明は企業をまたぐ場合に集積を強めることなどがわかった.このような近接性の議論は,距離・組織・技術という異なる次元で行われていた.しかしながら,これらの異なる次元を同時に実証データで研究したのは本研究が世界で初めてである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,平成24年度で得られた結果を再現するような成長モデルの提案と検証を行う計画であった.また現在重要視されてきている災害・倒産等の連鎖について分析するため,ネットワークの波及的縮退のモデルの検証も行う.加えて,米国・EU等の他の地域のデータを入手し,すでに行われた国内のデータに対する分析を同様に行い,結果の比較を通して地域に関する一般性の議論を行う予定であった. 欧州に関するデータは入手したものの分析が日本・アメリカのように容易ではなく加工を進めている段階である.しかしながら,研究に必要な枠組みはすでに完成しており,データの追加を待つだけであるので重大な遅れではない.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き,欧州データを統合するとともに,災害・倒産などの負の影響について研究を進める.近年開発された重なったネットワーク相互の連鎖モデルや,制御性の分析手法を用いて,これまでと同じデータに対して,これまでに得られた研究成果をさらに展開する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
大学業務により,3月に行う予定であった海外出張を実施できなかったため. 延期している海外出張を行うことで使用される.
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