研究課題/領域番号 |
24530509
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
坂本 理郎 大手前大学, 現代社会学部, 講師 (40449864)
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研究分担者 |
川端 勇樹 国際大学, 国際経営学研究科, 講師 (00614702)
西尾 久美子 京都女子大学, 現代社会学部, 准教授 (90437450)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | デベロップメンタル・ネットワーク / 関係性アプローチ / メンタリング / 若手社員 / キャリア初期 |
研究概要 |
当該年度においては、①若手社員の成長に有効な人間関係が職務特性によってどのように異なるのか、また②その有効性が若手社員の自律度および上司の関わり方によってどのように調整されるのかという研究課題を設定し、船の修繕を専門に行う造船業A社の若手社員を対象とした調査を行った。 調査の結果、新規性が特に強い部署においても、職場外を含む多様な関係性はほとんど認められなかった。このことから、新規的かつプロセス重視の職務であっても、必ずしも多様な関係性が認められるわけではないことが示された。 他方で、順調な成長が認められる若手社員の多くに、上司や先輩との間にメンターのような基軸となる緊密な人間関係があることが認められた。また、A社のいくつかの比較的規模の小さい部署においては、職場内には限定されるものの、上司や後輩を含めた互いに緊密で何でも話し合うような水平的な関係性が見られ、若手社員の成長に有効に機能していることが分かった。 以上の発見事実をふまえて、A社での2013年度の調査においては、対象者を大卒の若手社員にまで広げて、同様の調査を行う。大卒者は船の修繕現場の職務はなく、船主との折衝や現場との調整を行っている。この職務も新規的かつプロセス重視な側面が強く、職務遂行のためには様々な人間関係の構築が必要であるため、多様で緩やかな関係性が成長に与えた影響があるかもしれない。次に、高卒者および大卒者も合わせた若手社員の上司の調査である。これは、調査時点での当該部下との関係性の態様と、部下を取り囲む関係性が構築されるのを促進する育成側の要因を探ることを目的としている。 なお、当該年度における研究成果については、2013年7月6日に開催される日本労務学会第43回全国大会において報告を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずデベロップメンタル・ネットワークの先行研究については、近年発表された当分野に関するレビュー論文を参考に、また特に関連の強いと思われる研究論文(全て海外論文)を選択・精読し、本研究の位置づけや学術的意義を明確にした。 次にA社での調査については、ほぼ計画通りに進展した。その結果、上記のとおりの成果が得られ、学会報告するにまで至った。さらにA社の積極的な調査協力も得られたこともあり、大卒社員や上司層に対する調査を平成25年度に追加的に行うことが可能となり、その準備を進めた。 他方でS社におけるアクション・リサーチについては、具体的な実施内容について先方の人事部との協議が整わず保留となったが、先方の事情もあり事業期間中の実施は容易ではないと思われる。ただし、引き続きS社の担当者とは関係を維持し、調査へのご協力を得られるよう働きかけを試みたい。
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今後の研究の推進方策 |
上記のとおり、A社での調査を対象者を拡大し継続する計画である。当初の計画では、平成25年度に大規模な質問票調査を行う予定であったが、A社での追加調査を活用して仮説モデルの設定に着実に取り組んだうえで、平成26年度中には質問票調査を実施できるよう準備を進めたいと考えている。 ただし、大規模調査による理論モデルの検証ではなく、いくつかの限定された調査対象企業におけるサーベイに変更したいと考えている。なぜなら、これまでの調査の結果、個人のキャリア形成を支援するデベロップメンタル・ネットワークは、各企業における事業や職務の特性に依存する面が強いことが判明してきたからである。したがって、広範に多様な企業に勤務する若手社員のデータを得るよりも、丹念に調査対象企業の事業や職務の特性を理解したうえで調査を実施し、その結果を考察することが重要であると考えたからである。 最後にS社でのアクションリサーチについては、引き続き働きかけを行い実現させたいと希望しているが、上記のとおり難しい面もあると考えられる。ただし、上記のようなサーベイをS社で実施することについては実現可能性が高いと考えられるため、同時にそちらについても実施に向けた働きかけを行いたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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