研究課題/領域番号 |
24530514
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研究機関 | 立命館アジア太平洋大学 |
研究代表者 |
藤井 誠一 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 准教授 (00623430)
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研究分担者 |
中村 友哉 広島大学, 社会(科)学研究科, 講師 (20618128)
江 向華 広島大学, 社会(科)学研究科, 助教 (60582393)
李 根煕 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 助教 (20635487)
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キーワード | イノベーション / 新製品開発 / プロダクト・チャンピオン |
研究概要 |
研究の目的は、新製品開発プロセスにおいて、上流側のアイデアから下流側の市場投入までの間に現れるキーパーソンに焦点を当てて、関連するメカニズムを明らかにすることである。そのために、平成25年度の研究は、以下の三つの方向性で進めた。 (1)最新先行研究の課題レビュー:昨年度明らかになった先行研究の課題について、新たな進展が他の研究者から提示されていないかを確認するため、直近3年間を中心として、先行研究をあらためてピックアップした。その結果、いくつかの組織と個人に関する新たな提示があることが分かった。ただし、昨年度われわれが学会発表で指摘したようなキーパーソン人材の研究全体を俯瞰するような問題意識は見当たらなかった。 (2)同一企業内の複数キーパーソン人材の比較:昨年度は、日用品メーカーの二人のキーパーソン人材に対するインタビュー調査を行った。今年度については、食品メーカーにおいて同様の調査を行った。昨年度は新製品開発の革新度によりキーパーソン人材に求められる役割が異なる事が明らかになったが、今年度は異なる要因が明らかになった。当該調査は、2011年に事前に行った調査を追加する形で行われ、9月から3月にかけて実施した。 (3)海外研究者との交流:研究のもう一つの目的として、日本企業の中のキーパーソン人材の特徴を明らかにすることがある。このためには、これまでに新製品開発プロセスにおけるキーパーソン人材の研究を行ってきた海外研究者との意見や情報交換を欠かすことができない。そこで、2013年10月に米国アリゾナ州で開催された国際会議であるProduct Development and Management Associationの主催する「PDMA 37th Product Innovation Management Annual Global Conference」に参加した。学会発表を聴講し、新製品開発分野の新しいトレンドを認識すると同時に、本分野の主要な研究者と交流を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終的には、キーパーソン人材に関連するメカニズムを明らかにする事であるが、その糸口が実証研究を通して、少しずつ見つかっている。おおむね順調に推移していると考える根拠は、次の通りである。 本研究が研究期間内に明らかにしようとしていることは、三つある。一つ目は、日本型PCの概念化とモデル化である。これについては、日本型PCと従来欧米で研究されてきたPCとの違いが次第に明らかになりつつある。一方、キーパーソンそのものの出現モデルの基本形が提示できている。今後の調査ならびに研究により、これらを併せてこの到達点に至ることが可能な段階まで来ている。次に、組織内キーパーソンの違いの明確化では、これまでの調査で、同一企業内の二人のキーパーソンをそれぞれ比較することができた。その結果、異なるキーパーソンの存在を確認することができたと同時に、新製品開発プロセスが求めるキーパーソンの違いを明らかにすることができた。また、キーパーソンのヒントとなるような実践型と支援型の違いも浮かび上がっており、従来の欧米の研究では支援型が多く報告されているが、本研究ではむしろ実践型タイプが多く見られた。これは、一点目の日本型キーパーソンの特徴とも結びつくものと考えている。最後に、キーパーソンと組織構造の関係の明確化については、キーパーソンを従来研究のように個別の新製品開発プロジェクトで考察するのでは無く、そのキーパーソンの企業内キャリア、あるいは組織がアウトプットしてきた製品の経緯、といった長期的な視点でキーパーソンをとらえることが有用であることが分かった。これはきわめて大きな成果であり、重要な視点が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、次の三つの施策に取り組む予定である。 (1)研究成果の学会発表・論文投稿:これまでに行った調査や研究から明らかになった事を、学会発表ならびに論文投稿する計画にすでに着手している。昨年度学会参加したPDMAの「Product Innovation Management Annual Global Conference」は、本科研費で取り組んでいるテーマに即しており、参加者も先行研究者がいることが、本学会を選択する理由である。学会発表は10月に予定をされており、昨年度の実証研究の成果を発表する予定である。また論文投稿は、これまでに事前調査した内容と2年間の調査の実績を合わせた内容を、6月から7月にかけて投稿する。 (2)海外研究者との意見交換:さらに研究を拡大するためには、学会参加に加えて、他の研究者との交流の必要性を感じている。具体的には、本キーパーソン人材に関わる先行論文を多数執筆している3人の研究者である。いずれも北米の大学に勤務しており、これらの研究者を訪問し、これまでの成果を報告すると同時に、意見交換を実施したいと考えている。 (3)実務研究者との情報共有:企業に勤務する実務家が中心となり構成している(社)市場創造研究会において、新製品開発に関わるノウハウや知識の習得に活動が行われている。本研究の成果は、このような実務者の関心の範疇であることが肝要であると同時に、さらなる実証研究の拡大につながる可能性が高い。そこで、本研究会のメンバーとの意見交換や情報交換を行うこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
残金となっている金額はわずかであり、ほぼ目的にしたがった活動並びに経費の使用を行った。調査のすり合わせに行くべき予算として考えていたが、金額が小さく1回分の出張予算としては不十分であったため、使用しなかった。 次年度の使用計画は、(1)海外の学会における発表のための海外出張、(2)海外研究者との情報ならびに意見交換のための海外出張、(3)東京を中心とした都市での実務家との情報交流のための出張、(4)(1)から(3)までの活動に必要となる業務の委託と資料の購入、の4つの方向性で使用を計画している。生じた次年度使用額は、これらに充当する予定である。
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