研究課題/領域番号 |
24530520
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
古川 一郎 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (60209161)
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キーワード | 面子 / 言説と行為の乖離 / ブランド / 中国人消費者 / 場のプレッシャー / ネットワークの類型 |
研究概要 |
本研究の目標は、「嫌いだけど買う」という、言説と行為の矛盾を説明する論理的フレームを構築することである。研究初年度の平成24年度に引き続き平成25年度においては、場のプレッシャー(Field pressure)の論理を新たなアンケート調査により実証的に考察した。 特に注目したのは、対人類型による中国人の「面子」と日本人の「面子」の出現パターンの相違である。ただし、ここで注意しなくてはならないのは、同じ「面子」という言葉を用いてはいるが、その意味するところは中国の人々にとって遙かに広く深く、したがって、中国人消費者の消費者行動に大きな影響を与えている点である。中国の人々が、「面子」を極めて重視していることはよく知られているが、中国人にとって面子は、道徳的・倫理的に正しい行いをすべきであるという側面、経済的・政治的な地位を誇示する側面、そして日本人と同じように見栄を張るという側面がある。 さらに、日本語では面子という言葉とは結びつきにくいが、関係性を構築し良い関係を維持するという行為も中国人にとって非常に強い動機付けになっており、食事や金品の貸し借りという行為がそのための手段として明確に意識されている。 このような点を考慮して、対人類型により面子が人の言説や行為にどのような影響をどの程度強く与えるかについて日中でアンケート調査を行い考察した。その結果、対人類型により面子の出現項目が大きく異なることが検証された。 考察した成果の一部は、『嫌いだけど買う人達の研究』として、マーケティング・ジャーナル、2013年、vol.129に掲載された。また、平成26年6月のマーケティング・サイエンス学会での報告も予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国消費者の日系製品に対する「嫌いだけど買う」という現象を解明するために提起した「場のプレッシャー」というコンセプトについて、さらに理解を深めることが出来た。これまでに収集した定量的なデータを見直すことで、場のプレッシャーの構成要因について考察し完成させた論文『嫌いだけど買う人達の研究』が、マーケティング・ジャーナル、2013年129号(査読あり)に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は研究最終年度である。実証データをさらに積み上げて、これまでの考察において派生した疑問点について明らかにする。また、平成25年度に実施しきれなかったアンケート調査を、平成26年度に実行する。平成26年6月のマーケティング・サイエンス学会での学会報告、英語での論文投稿も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に予定していたが実施しきれなかったアンケート調査を平成26年度に延期したたため。 今後の研究の推進方策でも述べたとおり、アンケート調査並びに研究成果を公表するための論文投稿費用にあてる。
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