研究課題/領域番号 |
24530521
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
李 瑞雪 法政大学, 経営学部, 教授 (20377237)
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キーワード | ロジスティクス戦略 / 新興国市場 / 中国物流産業 / ロジスティクス・システム / ロジスティクス・クラスター / サプライチェーン・マネジメント |
研究概要 |
2013年度では、前年度の研究で提示した新興国市場におけるロジスティクス戦略の理論枠組みに基づいて、反復的な命題検証を目的にフィールド調査を続けてきた。また、中国日系自動車企業の事例を中心に、新興国市場における日系企業のロジスティクス戦略の類型化を試みた(Reexamination of Logistics Strategy Typology: Introducing New Perspectives from Cases in Emerging Markets)。この試論においては、新興国市場における日系企業のロジスティクス戦略の主眼点がロジスティクス・キャパシティの確保に置かれていると指摘したうえで、その確保策を巡って2つのタイプが存在すると解明した。即ち、①内部機能の強化と統合の戦略と②外部連携と共進の戦略の2つである。2種類戦略の相違の規定要因はロジスティクス・ナレッジの形成・蓄積パターンにあるという仮説も提起している。 かかる研究を進める中で、ロジスティクス戦略のあり方に影響する外部要因である、新興国物流産業の高度化プロセスの重要性をよりいっそう認識するようになった。とりわけ新興国で形成されつつあるロジスティクス・クラスターの実態解明に注力した。2013年度には、中国鉄道輸送システムの高度化とそれによって惹起されているロジスティクス・クラスターの形成、さらにこれらロジスティクス・クラスターの生成と発展が企業のロジスティクス戦略のあり方に及ぼす影響などについてフィールド調査と分析に積極的に取り組み、その内容を2篇のペーパーにまとめた。 最大の新興市場とされる中国の物流産業の高度化プロセスにに関するこれまでの研究成果をまとめたのは、2014年1月に上梓した著書『中国物流産業論~高度化の軌跡とメカニズム~』である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる目標は、「ケーススタディからの理論構築(Building Theories from Case Study)」手法を駆使して、分厚い発見事実の記述と反復的な命題検証のプロセスの中で、段階的に新興国市場におけるロジスティクス戦略理論を開発することである。現在まで若干のデータ収集方法について変更を加えたものの、おおむね計画通りに調査研究を遂行してきている。具体的には、新興国市場におけるロジスティクス戦略理論の枠組みを構築し、またその枠組みに沿って、事例研究を積み重ねながら、その枠組みの妥当性を繰り返し検証している。 また本研究のもう一つの目的である、中国物流産業の高度化の実態とメカニズムの解明作業も、順調に進展している。『中国物流産業論』という著書の中で、日系企業を含む荷主企業へのロジスティクス・サービスの向上という一貫した視点から、中国物流産業の高度化プロセスについて体系的な考察を展開した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の2014年において、まず新興国市場におけるロジスティクス戦略理論の検証作業を継続的に遂行していく。また『新興国市場のロジスティクス戦略:戦略構築のメカニズムと戦略実行のダイナミズム』(仮題)の著書作成に向けて準備を進めていく。 また、2013年度で手掛け始めた新興国のロジスティクス・クラスターに関する調査研究を段階的に深耕していく計画である。ロジスティクス・クラスターはどのようなメカニズムで生成・発展し、そしてクラスター内でどのようにイノベーションが引き起こされるか、さらにクラスターの諸相は、日系企業のロジスティクス戦略とロジスティクス・オペレーションに如何なる影響を及ぼすかといった問題意識をもって取り組んでいく。 研究の成果は段階的に、学会発表と論文投稿といった形で社会に還元する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、2013年度に実施する予定の中国の上海と深せんにあるロジスティクス・クラスターに対する現地調査は諸事情により、次年度の実施となったからである。 2014年4月下旬に、中国上海と深せんのロジスティクス・クラスターおよび関連企業に対して現地調査を実施する。また、8月下旬から9月上旬にかけて、インド、マレーシア、ミャンマーにある日系企業を対象に、ロジスティクスの取り組みならびに現地の物流事情について聞き取り調査を実施する計画である。
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