まず、本研究の目的は「家業」ないしは「家業意識」の概念解明である。この二つの概念は、東アジアにおける商店経営と家族との関係を考える上で、重要なキーワードとなる。最終年度にあたる平成26年度においては、日韓の両国を中心に、「家業意識」・「事業継承」・「投資」についての国際比較研究を行うことによって、日本の商業の特徴を明らかにした。さらに、これらの商業の基礎概念と商業政策研究との関連性について明らかにした。 最終年度の実績は以下の三つである。 一つ目は、科研の研究成果を国際研究会議で知的財産として共有する機会を持ったことである。2014年度9月24-26日、シンガポール国立大学にて開催された「7th oxford Asia Retail Conference」にて「The Characteristics of Business Succession of SME Merchants in Japan」の題名で発表した。 二つ目は、本研究のフィールドワーク調査地でもある韓国の商店街(ソウル市トケビ市場)を事例研究したことである。主な研究対象である商店街の組織的活動の成功要因を対外的視点を意識した「投資」に関連づけ、商業集積内での商業者間の相互作用を明らかにした。 三つ目は、「事業継承」・「家業意識」・「投資」が流通政策とのどのような関連性を持つのかを韓国の商業事例を結び付けながら、伝統的商業集積の問題性および課題を明らかにした。具体的には、韓国商業集積の主役である中小商人の意識の中に存在する「家業意識」および「事業継承」の無さが、商業政策の有効性を問う結果になったことを述べた。
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