研究課題/領域番号 |
24530524
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
石田 成則 山口大学, 経済学部, 教授 (50232301)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 保険持株相互会社 / M&A / 経営形態 / 事業提携 / アウトソーシング |
研究概要 |
本研究の目的は、グローバル経済における生命保険会社の海外事業展開を中心とした経営戦略とそれに適合した組織形態を解明することである。こうした海外展開と同時に、業務規制が緩和され、自由な業務選択や多角化戦略を実現することが可能となっているので、国内と海外において業務提携や経営統合を通じて、保険業だけでなく、証券業、信託業などの隣接分野へも進出している。それに応じて、相互会社の株式会社化や持株相互会社化への転換も模索されている。そこで、既にこうした業務・事業の多角化が進展している、米国の持株保険会社を取り上げ、その経営実態と組織変更の成果を、理論面と実証面から検証する。そして、新規事業展開とそれに適合した組織形態への転換が、生命保険会社の収益性、成長性、安定性へ及ぼす影響を統計データに基づき解析し、その成否の要因を分析する。 そこでまず、米国において過去10年間に組織改革を行った生命保険会社を取り上げて事例研究を行った。こうした会社の組織改革の実態を探るために、ビューロバンダイク社の統計資料、ならびに各社のHPから、「改革の目的」「組織変更前後の組織図」および「株主構成の変化などの資金調達の変化」について精査した。つぎに、保険料収入と総資産の変化および多角化程度による「成長性指標」、株主資本収益率などによる「収益性指標」そしてソルベンシ―マージン比率と株主資本収益率の変動による「リスク指標」の3つを取り上げ、1)時系列でみた組織改革前後の変化、2)組織変更がない株式会社形態や相互会社形態との比較分析、これらを通じて組織変更の効果や影響を実態面と実証分析から明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、生命保険会社のグループとしての経営戦略の方向性と、それに適合的な組織形態のあり方を検討したうえで、米国の持株相互会社の事例を取り上げて、その有用性と問題点を指摘した。まず、総合金融機関や金融系列・グループにおける金融・保険商品の提供が契約者利益に与える影響を検討した。そこでは、先行研究を通じて、事業の多角化が成長性、収益性そしてリスクに及ぼす影響を整理するとともに、相互の関係性について検討した。また、事業部制やカンパニー制そして持株会社の特徴と課題を整理し、事業の多角化に適合した組織形態のあり方について理論的に解明した。その結果、本社と子会社間の適正な情報交換により、明確な事業選択基準を確立することの重要性を指摘し、持株会社については内部資金効率の重要性を強調した。 つぎに、欧米の金融機関におけるM&Aの動向と金融持株会社の功罪について検討し、具体事例として米国の持株相互会社を取り上げ、その優位性について、理論と実態面から検討を加えた。まず、取り上げた持株相互会社の事例について、その組織再編の経緯や目的を整理し、最近の経営指標を比較分析した。そして、持株相互会社では、付随するリスクを上手く処理しながら、事業を多角化し、その収益性と成長性を契約者に還元する可能性が高いことを解明した。 こうした研究内容を、国際学会(APRIA/Asia-Pasific Risk Mamagement & Insurance Asscietion、韓国・成均館(ソンギャングン)大学開催、2012年7月)と国内学会(生活経済学会中国部会、岡山大学開催、2012年11月)において報告し、一定の評価を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、取り上げた持株相互会社の事例について、その組織再編の経緯や目的を整理し、最近の経営指標を比較分析したい。そして、持株相互会社では、付随するリスクを上手く処理しながら、事業を多角化し、その収益性と成長性を契約者に還元する可能性が高いことを解明することを目的にする。会社形態間の比較では、株式会社は相互会社と比較してよりリスク選好的であるので、持株相互会社は組織上の制約から一定の制限は受けるものの、リスク指標は高いことを解明したい。事実、持株相互会社の投資収益率などは高い値を示しているので、その要因を解析したい。 このような理論的かつ実証的な検討を踏まえて、わが国に持株相互会社組織を導入するために、保険業法上の対応を中心としてどのような条件整備が必要となるか、検討を加えたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
アメリカに本拠地を置く生命保険株式会社466社、相互会社14社、持株相互会社68社の2005年から2009年度財務データをサンプルとした実証研究を展開して、研究仮説を検証する。これらは米国で生じた金融危機(リーマン・ショック)以前のデータであるが、最近にり、保険会社や金融機関を取り巻く規制環境が変化し、経営者の報酬規制やデリバティブ取引を含む資本規制が強化された。そこで、こうした規制の変化の影響を把握することにより、実証結果をより頑強なものとする必要性を感じた。そこで、当初の研究内容と必要データとは異なり、2010年と2011年のデータを追加的に取得して、分析することとした。その結果、最新データ取得のために、次年度への繰越しが生じた。 得られた検証結果とこれまでの研究内容、さらに国際および国内学会での報告成果を、報告書に纏め、国内外の査読付き雑誌に投稿予定である。
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